先日、第142回芥川賞・直木賞の受賞作が発表されました。
芥川賞は11年ぶりに「該当作なし」、
直木賞は佐々木譲(ささき・じょう)さんの「廃墟に乞う」と
白石一文(しらいし・かずふみ)さんの「ほかならぬ人へ」が受賞しました。
これらの作品をご紹介しようと思ったのですが、まだ読んでいないので、
今日は、彼らの受賞作以外の作品をご紹介します。
★『 制服捜査 / 佐々木譲 』
佐々木さんは、去年、『笑う警官』が映画化され、話題になりましたが、
「警察小説」をたくさんお書きになる印象をお持ちの方も多いかもしれません。
『制服捜査』も、警察小説です。
警察官人生二十五年のベテラン刑事の川久保は、
道警の不祥事を受けた異動により、北海道の小さな町の駐在所勤務となります。
この町は、ここ何年も大きな犯罪が起きずにいたのですが、
川久保は、それを鵜呑みにせず、逆に気持ち悪さを感じ、
色々調べていくうちに、ある過去の事件を知り…。
という連作短編集です。
ひとつひとつのお話は独立していますが、
トータルではつながっています。
本を読み進むにつれ、川久保が感じた気持ち悪さが、ねっとりと読者にもうつり、
一刻も早くすっきりさせたくて、最後まで一気に読ませてしまうパワーがありました。
不気味さを漂わせる奇妙な町の真実を暴くまでの過程を是非、楽しんでください。
ちなみに、去年映画化された『笑う警官』も、
この作品と、少しかかわりがあるそうですよ!
今度は、こちらも読んでみようと思います。映画は見逃してしまいましたが…。
★『 一瞬の光 / 白石一文 』
こちらは、白石さんのデビュー作です。
文庫で589ページ。しかも字が小さめ。読み応えがありました。
でも、満足度は高く、夜中に読み終えたのですが、なかなか寝付けないほどでした。
主人公は、38歳の橋田浩介。
仕事ができて、顔もよくて、お金もあって、常に冷静という、
女性からは大人気、男性からは嫉妬されがちな男性です。
そんな橋田が、不幸な過去をもつ短大生の香折と知り合うところから、
物語は始まります。
あることを気かっけに、橋田は、香折の精神的、金銭的な支えとなっていきます。
橋田と香折の2人には、それぞれ別に恋人がいます。
2人の関係は、恋愛ではなく、自らも言っているように年の離れた兄と妹のような関係です。
ちなみに、橋田には、裕福な家庭で育ったモデル並みの容姿の恋人がいます。
正直言って、途中まではつまらないと思っていました。
恵まれ過ぎの橋田は鼻につくし、香折のわがままもにもうんざりだし、
橋田の職場の派閥抗争も面倒臭くて。
でも、気付いた時には、どっぷり本の世界に没頭している自分がいました。
橋田が魅力的なのではなくて、
結局、橋田はどこに向かうんだろう、ということが気になってしまい、
途中でやめられなくなってしまったのです。
いい本でした。
本を読み終えたとき、
最初に感じた、つまらないかも、という感想は、もうどこにも無くて、
心に残ったのは、温かな気持ちでした。
「人を思う」ということは、どういうことなのかを、
じっくり味わわせていただいた、素敵な本でした。
恋愛小説は、あまり読まない。
でも、たまには、ちょっと読んでみてもいいかなあ。
という方、是非、読んでみて。
案外、そういう方の方がはまるかも。
だって、私がそうでしたから。(笑)
さて、今日は、今年の直木賞受賞作家の受賞作ではない他の作品をご紹介しました。
近いうちに受賞作も読んでみたいと思っています。