53『インターセックス』
2009年10月12日
突然ですが、質問です。
「インターセックス」という言葉をご存知でしょうか。
「インターセックス(インターセクシュアリティ)」は、
生殖器の形状や染色体があいまいで、
男女どちらか一方に分類できない人のことを言います。
最近は、「性分化疾患」と呼ばれることが多いようです。
例えば、見た目は一見女性だけれど、
染色体は男性で、身体の中に男性の生殖器があったり、
逆に、見た目が男性でも、染色体は女性だったりします。
広義でみると新生児100人に1人の割合で生まれます。
この数字をどう思いますか?
私は、多いと思いました。
ちなみに、人格と肉体の性が逆転している性同一性障害とは異なります。
最近、某新聞で、この特集が組まれており、その中で、ある本が紹介されていました。
帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)さんの『インターセックス』という本です。
以前、このブログ「ゆきれぽ」で、
帚木先生の他の作品『閉鎖病棟』をご紹介したことがありました。
とても心に残り、たった1冊で、ファンになった作家さんです。
その作家さんの作品とあれば、読まねば、と思い、早速購入。
ちょうど1年前に出た本です。
帚木先生は、作家であると同時に、現役の精神科医でもあります。
タイトル通り、この本のテーマは、インターセックス、性分化疾患です。
そして、天才産婦人科医・岸川が主人公の『エンブリオ』の続編です。
私は『エンブリオ』は読んでいませんでしたが、まったく問題ありませんでした。
でも、岸川の過去が気になってしまい、結局、今は『エンブリオ』を読んでいますが…。
『インターセックス』は、岸川は、主人公ではありません。
主人公は、岸川の病院に赴任してきた女性医師、翔子。
彼女は「人は男女である前に人間だ」と主張し、
性分化疾患の患者の心を、そして、身体を救っていきます。
私は、この本を読んで知ったのですが、
性分化疾患の赤ちゃんは、生まれた時に、男女どちらかになるための手術をし、
その後、何度も何度も手術が繰り返されているのだそうです。
翔子は、その治療を批判し、男女の真ん中があってもいいと主張します。
作品の前半は、翔子と性分化疾患の患者たちとのやり取りがメインです。
後半は、サスペンス色が強くなっていきます。
翔子は、岸川の周辺で起こった謎の変死について調べるうちに、
ある秘密を知ることになり…
というお話です。
460ページもある長編ですが、あっという間でした。
小説としての面白さはもちろん、
性分化疾患をわかりやすく伝える教科書のような本でもあると思いました。
私は、できれば多くの人に、この本を読んでもらいたいと思います。
「え〜。でも、私には興味無い分野だし・・・」
と、今、心の中で思った方は、いませんか?
この本の中に、私自身の座右の銘としたい言葉がありました。
自分は無関係だから、偏見ももたないし、干渉もしない、
ということが、すでに「偏見」だ。
自分は関係ない、と思うのは無知と等価であり、恥。
大切なのは理解。
理解すれば、無関心はとてつもない恥になり、ついには罪になるからです。
胸にぐさっと突き刺さりました。
あなたも、様々な場面で「知らなかった」の一言で逃げていませんか?
知らなかったのなら、知ればいい。
知ろうとしたかどうかがとても重要なのだと知りました。
とにかく、一度読んでみてください。
もし、興味のある方は、『エンブリオ』を読んでから、
『インターセックス』を読んでみてください。
ちなみに、エンブリオは、文庫化されています。でも、こちらも上下巻あります。
2作合わせると、かなりのボリュームです。
でも、秋の夜長、少しずつ読むにはいいかも。
私は、今夜も『エンブリオ』の続きを読みます!
読んだら、また感想を「ゆきれぽ」に載せますね〜。
作品同様、ブログも長文になってしまいました。
最後まで、読んで下さってありがとう。