49『八朔の雪— みをつくし料理帖』
2009年9月14日
今朝は、朝早くからずっと泣いていました。
昨日は疲れて早い時間に寝てしまったので、
今日の「ユキコレ」で紹介する本を朝に読んだのです。
普段は苦手な朝も、読書のためなら起きられるから不思議です。
そして、私は、朝から頬の上に涙の川、いや大河ができてしまったのではないか、
と思えるくらいに泣きっぱなしでした。
私をそこまで泣かせた本は、
『八朔の雪(はっさくのゆき)— みをつくし料理帖(りょうりちょう)
/高田郁(たかだ・かおる)(ハルキ文庫)』です。
今、紀伊國屋書店をはじめ、全国の書店でじわじわ人気となっているようです。
八朔の雪とは、
八月朔日(ついたち)に吉原の遊女たちが白無垢を着ている情景のことで、
残暑厳しい季節に雪を思わせる風情から、そのように呼ぶのだとか。
つまり、この作品は、吉原の時代のお話。時代小説です。
でも、吉原のお話ではありません。もちろん吉原の話も出てきますが。
主人公は、18歳の澪(みお)です。
江戸のそば屋「つる家」を手伝いながら、
時々、ふるさと大阪の上方料理を作り、ふるまっています。
大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、
どちらの良さも取り入れた、澪のオリジナル料理は、
徐々に江戸の人々に受け入れられていきます。
と同時に、地元の有名料理屋から妨害されるようになるのですが…。
実際、澪の作る料理からは、いい香りがふわっと漂ってきました。
私も同じ料理を食べたい!と思っていたら、
本の最後に澪の料理帖(レシピ)が載っていました。
これなら、再現できますね。
ちなみに、澪の作った料理の名前も素敵です。
「ひんやり心太」、「とろとろ茶碗蒸し」、「ほっこり酒粕汁」など。
美味しそうな料理の表現に食指が動いただけでなく、
江戸と大坂の味の違いも勉強になりました。
出汁は、江戸はかつお節、大阪は昆布。
心太は、江戸は酢醤油、大阪はお砂糖で食べるといった違いです。
また、心に残る言葉もたくさんありました。
「口から摂るものだけが、人の身体を作る」
「料理人は料理で勝負せえ。人としての器量を落としたらあかん」
「苦労に耐えて精進を重ねれば、必ずや真っ青な空を望むことが出来る」
とくに2番目の「器量」のセリフに、私は一番心打たれました。
嫌がらせをしてくる有名料理屋に、嫌がらせをやめるようにお店に乗り込もうとした時、
一緒に暮らす母親代わりの女性から、澪が言われた一言です。
人として大切なことが、この本の中にはたくさん詰まっていました。
そして、私は、この本を読んで、何度も「泣いた」と申しましたが、
私は、澪の、料理や周りの人々へのまっすぐでピュアな気持ちや、
澪を支える周りの人々の優しさに泣き、
さらに、澪をはじめとした登場人物の過去が徐々に明らかになるにつれ、
また、泣いたのでした。
澪は、悲しい時や辛い時は辛抱するのですが、
人から優しくされると我慢できずに泣いてしまうのです。
優しい人がたくさん出てくる本です。
つまり、それだけ泣くポイントが多いということなのです。
今朝の青空が清々しかったのは、空の色によるものだけではなかったように思います。
読書の秋到来です。
秋の夜長に読む本もいいけれど、朝早く起きて読む本もいいものですよ。
特にこの本は。
読書の秋のはじまりの「1冊目」としてもオススメです。