9『ポトスライムの舟』
2009年3月21日
第140回芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』を読みました。
作者は、私と同じ1978年生まれの津村記久子(つむら・きくこ)さん。
この本に、彼女は、このようなコメントを寄せています。
持てるものは少なくとも、工夫と信頼で人生は楽しめるのでは・・・
と。
主人公は、29歳の女性。契約社員のナガセ。
彼女は、工場で契約社員として働きながら、
友達のカフェとパソコン教室でバイトをする日々を送っています。
そんなある日、工場の掲示板であるポスターを見つけます。
それは、世界一周旅行のポスターでした。
その旅行費用は、163万円。工場での年間の手取りとほぼ同額です。
ふいに「行きたい」と思った彼女は、その費用を貯めることに。
最初は、その費用をいかにして貯めるか、が書かれた作品だと思ったら、
それだけではありませんでした。
どちらかというと、彼女の周りの様々な人との交流が、主といってもいいかもしれません。
あ、こういう人いる!と思えるような、フツーの人たちがたくさん出てきます。
まるで、友人の話を聞いているような近さ。
なんでわざわざ本を読んでまで、
友人の愚痴を聞かされなければいけないの、と思うようなところもあったり、
かと思えば、他人事とは思えないほど、リアルに共感したり、
とにかく、本と自分の距離が近いのです。
私たちのさりげない日常が、そのまま切り取られていました。
主人公ナガセを「たまたま駅ですれ違った女性の話」に置き換えて、読んでみると、
とてもリアルに響くかも!