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明日の約束

2008年11月17日

『明日の約束(あしたのやくそく)/辻仁成(つじ・ひとなり)』を読みました。

本の帯に「かけがえのないものを取り戻すまでの5つの物語」とあり、
つい手を伸ばしてしまいました。

「かけがえのないもの」は、もちろん人によって異なるわけで、
取り戻せた人は、まだ幸せで、気づかない人の方が多いのが現実なのかもしれません。
私自身、今まで得たものもたくさんあるけれど、
きっと失ったものもたくさんあるのだと思います。
その中には、なくしてはいけないものもあったかもしれないわけで。
あ〜、気づかない自分が悔しい。
ってことは、無いのか!?
などと、勝手に不安を感じるのもおかしいのですが。

さて、『明日の約束』は、
全部で5つの作品と、あとがきのかわりに特別ストーリーが1編収録された、短編集です。
 
仕事中、常に見知らぬ女性に見つめられる、郵便局の窓口の男性のお話、
別れ話をしたい女性とプロポーズをしようとしている男性のデートのお話、
文明とは無縁の、ある村に、医療支援に出かけたまま住みついた医師のお話など、
ありそうで、でも無さそうな、不思議な世界観が描かれています。

そして、この作品には、登場人物の名前がほとんどありません。
「男」「女」「少年」「母親」といった風に表現されているだけで、
具体的な名前が一切出てこない。
また、時代も人種もはっきりしていません。
だからこそ、ふわふわしていて、つかみどころが無いようにも思える。
でも、惹きつけられる。
想像力がかきたてられます。

ぐるぐるもがきながら遠回りして、気づいたら目的地に着いていて、
あれ?いつの間に・・・。と自分でも気づかないくらい、するりと目的地があらわれて、
逆に戸惑ってしまう感じの作品でした。

この感覚、あなたも味わってみては?
1日1話で、1週間もあれば、読めます。
何が不満なのかわからないけれど、不満はたまっている、
という、すっきりしない日々を過ごしている方にとっては、いいかも。
爽快!とまではいかないけれど、
気づいたら心が落ち着いている感じを味わえるかもしれませんよ〜。

yukikotajima 10:35 am