サド侯爵夫人
2008年8月30日
今、利賀では、世界的なフェスティバルが行われていることをご存知ですか?
8月9日から31日まで利賀芸術公園で行われている
「利賀フェスティバル〈SCOT サマー・シーズン〉2008」です。
演劇界では「TOGA」という言葉は、世界的に知られています。
昨夜、私は、今までに見たことの無い舞台を見てきました。
私が見たのは、鈴木忠志さん演出による、
三島由紀夫さんの『サド侯爵夫人(第2幕)』です。
サド侯爵(1740〜1814)は、
様々なスキャンダルを引き起こし、
人生の大半を牢獄で過ごしたというフランスの作家です。
ちなみに、SMのサディズムという言葉は、
サド侯爵に由来しているのだとか。
つまり、サド侯爵は、そういう人です(笑)。
その奥様が主人公のお話です。
舞台は3幕ありまして、今回は、第2幕を見ました。
舞台は、1778年のフランス。
第1幕は、妻ルネの妹とイタリア旅行をしたサド侯爵が逮捕されるまで。
第2幕は、その6年後のお話。
サド侯爵をめぐり、女たちがそれぞれの思いをぶつけあいます。
登場人物は、女性が4人。
サド侯爵の妻・ルネ、
姉の旦那とイタリア旅行に行きつつも反省もしていないルネの妹・アンヌ、
そして離婚をすすめるルネの母親・モントルイユ夫人、
サド侯爵との意外な過去を語るサン・フォン侯爵夫人。
そう、サド侯爵は出てきません。
ある1室で繰り広げられる会話劇です。
「能」っぽさが漂う、独特な動き&発声方法でした。
基本的に笑顔は無い。
あってもニヒルな笑い。
あとは、ずっと1点を見つめ、まるで人形のような雰囲気です。
そして発せられる言葉は、低く強く、独特なテンポをもっていました。
会話も、普通、そこで切らないだろう・・・
と思えるところで、あえて切ります。
例えば、お姉さま⇒お、ねえ、さ、ま、のような感じです。
最初は、正直違和感を感じていたのですが、
段々、このリズムが心地よく感じられました。
そして、気づいたときには、そのリズムが普通になり、
入ってくるのは、言葉と言葉が、ぶつかり合う様のみ。
言葉と言葉が、ぶつかる音、
感情と感情がぶつかりあう音が、聞こえてきそうな感じでした。
ビビビっという線が見えそうな感じ(笑)。
実際、舞台は、観客席の目の前!
息づかいやまばたきまでしっかりと見える近さなので、
舞台を見る、というよりも舞台にいるような感覚でした。
それにしても、ここまで女性たちをふりまわした「サド侯爵」って、
一体どんな人だったんだろう。。。
とりあえずは、三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を読んでみよう。
山奥の自然ゆたかな森の中の、合掌造りの劇場で見た、この舞台。
もしかしたら、私が見たものは、幻?夢?妄想?というような気分になるほど、
衝撃的な舞台でした。
来年以降、もし上演されることがあれば、ぜひ、ご覧頂きたい舞台です。
きっと、あなたの心にも、ぐさ〜っと、
感じたことのない感情の針が突き刺さると思いますよ。
そういえば・・・
舞台が始まる前、空がピンク色にそまり、
空を見上げてみたら、
大きな虹が!
感動〜!!!
そして、利賀からの帰り道。
たぬきらしき小さな動物に遭遇しました。
しかも6回も。
虹にたぬきに「サド侯爵夫人」。
どれもが、普通には、ありえないことばかりで、
なんだかとても不思議な感覚になった一夜でした。
今回、私が感じたのは、
感情のあらわしかたは、様々である、ということ。
そして、ますます「人の気持ち」を理解するのは、
難しいなぁ〜ということを思ったのでした(苦笑)。