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家日和

2007年5月31日

今週は、私の大好きな作家、奥田英朗さんの最新小説
『家日和』をご紹介します。

本の帯びには「家庭発信 6つのドラマ」とあります。
家庭が舞台の6つの作品がおさめられた短編集です。

簡単にご紹介しますと、
まず、インターネットオークションにはまってしまった主婦の話「サニーデイ」。
インターネットオークションは…
まず、商品を出品します。
そして、自分の商品に入札者があらわれて、落札者が決定して、
落札者とメールで連絡をとります。
そして、最後は、他のユーザーに情報提供するために、
落札者が出品者を、また出品者が落札者を、評価します。

このお話の主人公の主婦は、物が売れる喜びよりも、
自分の出品した商品に、たくさんの方が入札することで、
まるで自分が注目されているような気分になれることと、
落札者から商品や対応について感謝されたり、いい評価をもらえたりすることに、
喜びを感じます。
そして、その主婦にはさらに嬉しい変化が生じ、
どんどんインターネットオークションにはまっていき…というお話です。

その他、突然会社が倒産してしまった夫の変わりに、
奥さんが働きに出て、夫が家で主夫になる話。

一緒に住んでいた妻と別居をすることになった夫が、
妻がいなくなった後に自分好みの部屋を作っていく話。

内職をしている主婦のひそかな楽しみの話。

すぐに会社をやめて起業することが好きな夫と、それに振り回される妻の話。

ロハスにはまった妻と、そのことを小説にしたい小説家の夫の話。

など、全部で6つの作品が納められています。
全て、特に大きな事件がおきるわけでも、誰かが大きく傷つくわけでもありません。
どこにでもありそうな、普通の人々のお話です。
今までの奥田さんの作品と比べると、おだやかな部類に入るかもしれません。
でも、そのおだやかさが、まさに本のタイトル「家日和」なのだと思います。

自分が何に向いているか、
どんなことに心踊るか、
わかっているようで実はわかっていないことの方が多いのかもしれません。
では、どこで気づくのか?
それは「家の中」です。

『家日和』。
読み終えたあとは、
毎日暮らしている家が、一緒にいる家族が、いつもよりもいとおしく感じられます。
そして、人ってなんかいいな、と思えてきます。

あなたも、6つの家庭の様子をこっそりのぞいて見ませんか?

yukikotajima 10:20 am