「伝言猫がカフェにいます」
2023年7月3日
突然ですが、今あなたが会いたい人はいますか?
離れて暮らしていて長いこと会えていな人に会いたい、
亡くなった親しいひとに会いたい、
事情があってどうしても会えないけれど会いたい。
その願い、もしかしたら伝言猫がかなえてくれるかもしれません。
先週のSTEP!のコーナー「みずなしまほの『これ、いいね!』」では、
PHP文芸文庫から発売されている標野 凪さんの「伝言猫がカフェにいます」という連作短編集をご紹介しました。
本の表紙には、茶トラのねこちゃんがカフェにいる様子が描かれています。
本屋さんに行ったとき、この可愛らしい表紙が目に入り、
思わず購入してしまいました。
買った後に、以前購入して読んで本「今宵も喫茶ドードーのキッチンで」の著者標野凪さんの作品だと気が付きました。
今回の「伝言猫がカフェにいます」も、心温まる一冊でした。
この本の舞台は、あの世とこの世の境にあり、「会わせたい人に会わせてくれる」と噂のカフェ・ポン。
そして、主人公は天寿を全うして、あの世に渡った猫「ふー太」です。
キャラメル色と白の縞模様が特長のねこです。
この本では、現世のことを「緑の世界」、
そして亡くなった後の世界を「青の世界」と呼んでいます。
緑の世界と青の世界は、意外にも地続きで、
間にちょっとした出入口があるそう。
ただ、青の世界にきてから最初の7か月は、
地球が歪んでしまうため自由に緑の世界に行けないんです。
また、青の世界では、何もしなくても一応ある程度生活はできますが、
ちょっと豪華なおやつやおもちゃを買うお金は、
自分で用意しなくてはなりません。
そこで、ふー太はアルバイトを探すことに!
ふー太は「仕事を5回達成すると会いたい人に会える」という報酬につられ、
「カフェ・ポン」の店主虹子さんのもとで働くことになります。
「会いたい人と会わせてくれるという噂のカフェ・ポン」
カフェ・ポンを訪れたお客さんは、会いたい人の名前をかいて、
お店ポストにいれます。
その中から虹子さんが選んだ願い事を伝言猫がかなえていきます。
伝言猫のふー太は、彼らが「会いたい」人からの言葉を依頼主に伝えられるのか。
最初の依頼は、「亡くなった父に個展を見てもらいたい絵本作家」の願いをかなえること。
依頼主の絵本作家の現状を探り、
亡くなった父に会いに行くなど、
初仕事ながらふー太は奮闘します。
なぜ、依頼主が亡くなった父親に会いたいと思ったのか、
そして、父はどんな言葉を伝えたいのか。
ふー太は、どうやって父の言葉を依頼者に伝えたのか。
私は、ちょっぴりハラハラしながら、
ふー太の活躍を見届けました。
他にも、生まれなかった我が子を思い続けている保育士や、分かれてしまった元カレともう一度話したいと考えている女性など。
亡くなった方に会いたい!という依頼だけではなく、
まだ生きているけれど、どうしても自分で会いに行くことができない依頼など、
それぞれいろいろな事情があり、思いがあるんだなぁと感じました。
ふー太はどうやって依頼主の願いをかなえていくのか、
依頼主の願いをかなえることはできるのか。
そして、もし仕事を5回達成できたら、ふー太は、誰に会いに行きたいのか。
ぜひ、この本を手に取って確かめてみてくださいね。
また、伝言を届けるのは猫のふー太なので、
ほんわか優しい気持ちで読めました。
本の中に出てくる猫らしい行動や発言にも、
癒されました。
読み終わったあとは、じんわりと暖かい気持ちになりました。
エピソードごとに、テーマがあるので、
一つ一つ、自分だったらどうするだろうと考えながら読んでいました。
そして、自分が会いたい人は誰だろうなぁと。
もし会えるなら・・・と考えちゃいますよね。
実際には会うことはできないかもしれませんが、
この本を読んで、自分が会いたい人との思い出などを思い出すことができたのもよかったです!
一つのお仕事ごとの短編集になっていますので、
手に取りやすい1冊です。
ぜひ、伝言猫が思いを伝える様子を見守ってみてくださいね。
今回は、PHP文芸文庫から発売されている標野凪さんの「伝言猫がカフェにいます」をご紹介しました。