7月19日 gra書パート2
2011年7月19日
「gra書」 書家エピソード VO.15 池大雅 1723(享保8)-1776(安永5)
ここからは、毎回1人の書家をピックアップして、様々なエピソードを紹介します。
今回は、15回目。今回は、池大雅(いけのたいが)についてご紹介します。
池大雅といいますと、画家でご存知の方もいらっしゃるかと思います。
江戸時代、与謝蕪村(よさぶそん)とともに、日本の文人画の大家として有名な人です。
文人画というのは、中国から伝わったもので、いわゆるインテリさんのたしなみとして描かれた絵なんですが、
池大雅は、ほかにも中国の故事や名所を題材に屏風に絵を描いたり、
ちょっとした日本の風景をサラサラっと描いたり、インテリさんというよりは作家のイメージが強い画家です。
で、その池大雅は、絵を始める前に書を行っていました。
彼が7歳の時に本格的に中国の書を勉強して、京都の萬福寺で腕前を披露したこともあるということです。
その池大雅の書ですが、やはり文人画の大家らしく、中国の詩・漢詩を縦長の紙にしたためたものが多いです。
この池大雅をはじめ、江戸時代に活躍した書家は、縦に長い紙に筆で文字を描いた作品を、数多く書きました。
これは、中国の明の時代から流行した文人の書の書き方が日本に伝わったものです。
いわゆる条幅(じょうふく)作品と呼ぶこともあります。
この条幅作品は、現代の書道の作品の書き方に通じています。展覧会の会場でよく見る書道の作品は、
日本の江戸時代の書家の作品のスタイルが原点ともいえます。
ちょっと話がそれました、戻しましょう。
池大雅の書の作品は、絵と同じように変幻自在といいますか、たっぷり墨を筆に吸わせて、一気に行書や草書で格言を書き上げたものや、
やや太めの筆でサラサラっと書かれた草書の句の作品、
文字の形も立ての行の流れもゆがんでいるものの、作品全体でみると1つにまとまっている絶妙なバランスの漢詩の作品、
ハケのような筆の使い方で隷書が書かれているものなど、様々なものが残されています。
また、絵を描いて、その片隅に、絵のタイトルであったり、落款(らっかん)、自分の名前ですが、これがさらさらと書かれているのがいい、というものもありで、書もそうですし得もそうですし、両方組み合わせたものもそうですし、日本の文人のいいお手本と言えるのが、この池大雅ではないかと思います。
池大雅 草堂句より
池大雅 碧げん二句より
池大雅 寒山詩より
その池大雅には、こんなエピソードがあります。
ある日、石刻の十三経という本を池大雅が買おうとしました。
ところが、この本があまりにも高くて買えない。
そこで、貧乏暮しの中から何とか百貫文を捻出していざいざと買いに行くと、今度は、一足違いでその本が売れてしまって、もうないと本屋さん。
そこで普通だったらそのお金をそのまま持ち帰るところなんですが、大雅は持ち帰りませんでした。
どうしたか。
本を書くためにためたお金なので、その本が買えないんだったらこの百貫文に持っている理由はないということで、近くの神社に寄付してしまいました。
この辺が、金の事を気にせず芸術の世界に没頭した大雅らしさだといわれています。