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7月12日 gra書 パート2

2011年7月12日

「gra書」 書家エピソード VO.14 良寛 1758(宝暦8)-1831(天保2)

ここからは、毎回1人の書家をピックアップして、様々なエピソードを紹介します。
今回は、14回目。ここしばらく中国の書家を紹介していましたので、
今回は、日本の書家をご紹介します。
日本の書家といいますと、以前紹介した空海、嵯峨天皇、橘逸勢のいわゆる「三筆」が有名ですが、
それ以降、書道の作品として評価が高い書家を挙げるとなると、
江戸時代まで一気に下ります。
もちろんその間、鎌倉、室町、安土桃山時代にもいるにはいるんですが、書道の芸術性の高さでいうと、江戸時代の書家がやはり群を抜いています。
今日は、その江戸時代の書家の1人、良寛を紹介します。

良寛は、今のお隣新潟県の僧侶であり、書家であり、俳句を詠む俳人でもありました。
良寛は地元の名主さんの家に生まれて、将来家を継ぐための見習いをしていましたが、
18歳で出家して、現在の岡山県の円通寺で修業しました。
その後、諸国をめぐって48歳の時に、生まれ故郷の新潟に戻って、
様々お寺や神社の境内にある庵で生活をしていました。
良寛は、いわゆる僧侶がふだん行う難しい説法をせず、
普段の質素な生活を人々に示したり、簡単な名言や格言で仏法を説きました。
その姿は、当時の人々から高い評判を得たということです。
なお、江戸時代の人ということで、辞世の句も残されています。
「散る桜 残る桜も 散る桜」です。

さて、この良寛の書ですが、
手紙や掛け軸、扇子に書かれた文字が多く残されています。
特に草書で書かれた文字や、仮名で書かれた文字が多く、細い線でつれづれなるままに…という雰囲気が、良寛の書の大きな特徴です。
その良寛の書の中で最も有名なものの中に「天上大風」があります。
ie.jpg

B4判ぐらいの大きさの紙に書かれた作品で、
これは、凧上げの凧に書かれたものです。
やはり細い線で、こちらは楷書で書かれていますが、
ぱっと見お世辞でも上手な字とは言いにくい、子供が書いたような字にも見られる書き方をしています。
ですが、その文字からにじみ出てくる素朴さと子供っぽさが、
書く前に狙ってできるものではない、俗に「率意(そつい)」とも呼ばれます、長年染み付いたものが見事なバランスで生まれる美しさが、この良寛の書の評価されているところです。
この良寛は、若いころから、このコーナーでもご紹介しました、
王羲之や孫過庭、懐素などの行書や草書の文字をよく学んでいました。なので、ぱっと見の文字は子供っぽく、拙いものであったとしても、
そこに至るまでの経緯、バックボーンがしっかりしているので、
作品全体を見ると、どこかでアンバランスをバランスよくしている何かが、あります。
なお、この良寛の文字は、実際に見ることができます。
新潟県の出雲崎町、長岡から海の方角へ向かったところにある町ですが、ここにある「良寛記念館」に、様々な作品が残されています。
そして、良寛の文字の複製も買うことができます。
この夏休み、新潟に行かれる方、良寛の文字を探してみるのもいいかもしれません。

takanobu827 10:42 am