5月10日 gra書 パート2
2011年5月10日
「gra書」 書家エピソード VO.5 空海(くうかい)
ここからは、毎回1人の書家をピックアップして、様々なエピソードを紹介します。
スタートから4回、中国人の書家を紹介したので、今回は、日本人の書家を紹介します。今日紹介するのは、「空海」です。
空海といいますと、学校の歴史の授業で習いました、僧侶です。弘法大師という名前でも有名な、真言宗の開祖です。
空海は、出家する前は、佐伯真魚(さえきのまお)という名前で、今でいう市町村長の息子として育ちました。その後、仏教の修行を行って空海と名乗り、遣唐使で唐に渡った後、真言密教を日本に広めました。
さて、この空海は、嵯峨天皇、橘逸勢とともに、字をとても美しく書く「三筆(さんぴつ)」の1人に数えられます。
その空海が書いたものの中で最も有名なのが「風信帖(ふうしんじょう)」です。
これは、空海が最澄にあてた手紙で、現在国宝になっています。手紙の初めに「風信」と書かれていることから「風信帖」と呼ばれています。行書と草書が入り混じった「行草体」で書かれています。この手紙には、最澄から仏教に関する書物をいただいたことに対するお礼と、最澄がいる比叡山に来るよう誘っていただいたものの、都合がつかず行くことができないことが書かれていて、そのあとに、「ぜひ、仏教の根本的な問題を語り合って、仏教を盛んにしていきたい。どうか、こちらに足をお運びいただくよう切にお願いします。」という内容が書かれています。
空海が開いた真言宗と、最澄が開いた天台宗は、当時新しい仏教として注目されていました。そんな中で、これからの仏教をどのように広めていけばよいのか、お互いに話し合うことで、何かしら新しい道が開けるのではないか、そんな想いを、空海と最澄は抱いていたようですね。
この空海に関しては、ことわざや慣用句がいろいろありますね。
「弘法も筆の誤り」。たとえ大物であっても、間違いをすることはある、という意味ですね。
「弘法筆を選ばず」。字を書くのが上手な人は、筆の良しあしを問わない、という意味。
それから、「なまむぎだいずにしょうごんごう」。この言葉の意味がわかる人いるでしょうか。「まなむぎなまごめなまたまご」は分かりますけどね。「なまむぎだいずにしょうごんごう」これは、書道から離れますが、昔から伝えられている呪文の1つだそうです。これを唱えれば、難事を避けることができるということです。これと空海の関係はといいますと、空海には「なむだいしへんじょうこんごう」という御宝号(ごほうごう)があります。浄土宗や真宗いう「なむあみだぶつ」が、真言宗では「なむだいしへんしょうこんごう」になります。これがなまって広まったのが、先ほどの「なまむぎだいずにしょうごんごう」です。