先週は、先週土曜日23日から県民会館で行われている、「日展富山展」の模様をお伝えしました。今月15日まで行われています。
こういった日展などの展覧会で、書道の作品をどのように見ればよいのか、いまいちわからない、という方も多いかと思います。今日は、書道の作品を見るポイントを簡単にご紹介します。なお、あくまでも、作品を楽しむ見方の1つですので、これが100%です、というわけではないのでご了承ください。
まず、漢字です。漢字は、書かれている文字が少ない少字数(しょうじすう)と、書かれている文字が多い多字数(たじすう)と、作品の携帯は大きく2つに分類されます。
少字数の作品は、文字の書き方や、墨の黒色と紙の色とで作る空間の面白さがポイントです。力強く文字が書かれているところに、大きな白い部分が見えて、バランスが絶妙という風な表現をします。これは、作品1つ1つでどの部分が面白い以下というのが違うので、実際に見ることが大切ですね。
少字数の作品の構図例 紙面全体の中で、どこに墨の黒を置くか、紙の空間を生かすか、バランス感覚が求められます。
多字数の作品は、文字が多いので、上から下に書かれている文字の行にブレがないか、途中で文字の感じが変わっていないか、作品の初めから終わりまで一貫したものがあるかどうか、そういった点が見るポイントと言えます。逆に、わざと途中で文字の感じを変えるという方法もありますが、基本的には、その作品の雰囲気を全体で表現できているかどうかというところでしょうか。
多字数の作品の構図例です。1つの行の中で、ところどころ空間を設けることで、文章の区切りを示したり、見せ場を作ったり、細かい計算が実はなされています。
次にかなの作品です。かなの作品は、文字の大きさによって、小字(しょうじ)、中字(ちゅうじ)、大字(だいじ)と分けることができます。
小字のかなは、普段私たちがA4判の紙で活字で目にするくらいの大きさの文字と思ってください。使う筆も、いわゆる小筆です。で、小字がなは、やはり文字の線の切れがポイントです。特に、書き終わりの部分。最後まできれいに線が書かれているかどうかで、作者の腕が見えてきます。
この文字の最後の線を見てください(拡大するとより分かります)。この最後の線がスムーズに書かれているかどうかがポイントです。この部分は神経を使うところなので、特に慎重に書くケースが多いです。
次に中字です。こちらは、CDの大きさ程度の紙に2文字くらいの字の大きさのイメージですね。中字になると、紙の大きさが、畳の半分くらいの大きさとぐっと大きくなります。そこに、たくさんの字を書いていきます。ですので、紙にどのような構成で字を書いていくのか、そして、墨の濃い薄いの差をつけることもできるので、そのバランスもポイントになってきます。
かなの中字作品の構図例です。文字を扇形に散らしたり凹のように散らしたり、大きめの紙面にどのように文字を配置するかというところが、1つのポイントです。
そして、大字です。さらに字が大きくなります。紙の大きさも、畳くらい、漢字の作品と変わらないぐらいになります。ここまで大きくなると、1つの行にたくさんの字を書いていくので、その行をまっすぐにさせるのかちょっと揺らすのかという、やはり構成と、墨の濃いところ薄いところのバランスを見ていくといいかと思います。
かなの大字作品の構成例です。この作品の場合、縦に長いので、行をまっすぐにして書くのではなく、多少の揺れをつくって、作品の流れや動きをつくっています。
そして、漢字仮名交じり文、こちらは、読みやすさというところがまず見るポイントでしょうか。そして、墨の黒い色と紙の色とのバランス、見せ方ですね。見る人に対して、見やすく書くか見にくく書くかというところも作品作りの1つのキーですし、墨の濃さ、そして、どんな文章を書くかというところも、作品に大きくかかわってきます。
漢字仮名交じり文の作品の構図例です。読みやすく、見ていて美しいと感じさせる構図ということで、シンプルな構成にする作品もあります。
と、ざっと、書の作品を見る上での1つの味方をざっと紹介しました。
さて、こういった展覧会で入選するには、賞を受賞するには、何かしらの傾向や対策が必要になってくるのでしょうか。ちょっとこれは種明かしをするようで聞きにくい部分ではありますが、先週インタビューに答えていただいた、書家の江畑しゅんとうさんにきいてみたところ、傾向はあるようです。しかも、かなり難しそうです。
さて、江畑先生によりますと、書道の作品を書く上で、基本となる昔の書道の名品、古典といいますが、を練習して、そこから応用として、作品づくりにつなげていくことが、書道のいい作品をつくる道だということです。ですので、これから作品をつくることを考える場合は、どんな作品を書きたいか、イメージして、そのイメージに近い古典を探して真似をしてみる、「臨書(りんしょ)」と言いますが、ここからスタートです。書道の本はそれほど多く出回っていないので、書道用品店に行っていろいろ聞いてみるのもいいと思います。