○第141回直木賞受賞は北村薫さんの『鷺と雪』
・デビュー20年目、候補6回目での受賞には「あげるのが遅すぎる」との声も多い、
実力では文句なしの作家さんです。
自分もファンでして、今回の受賞は嬉しい限り。嬉しさのあまり小冊子も作成して配布しております。
・国語教師をしながら作家デビュー。当時覆面作家であった。
その安定した描写力と構成力からベテラン作家の別名義では、との声や
その名前と作風から若い女性では、などの噂もたった。
・全体を通して優しい雰囲気が漂う作品が多く、
また文学や落語などに対する造詣が深くその知識を作品にも盛り込んでいる。
もちろんミステリ作家としても本格へのこだわりがあり(ワセダミステリクラブ出身、当時から編集者などとも交流があり、
また後輩が作家デビューするなど業界とのかかわりが深かった)上質な謎を用意する。
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★ 『鷺と雪』のシリーズについて(発行は全て文藝春秋)
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・昭和初期、という激動の時代を描きたいということがまず頭にあったのだと思います。
生活など丁寧に調べられてかかれていると思います。
主人公は華族令嬢の英子とその運転手の別宮(通称ベッキーさん)。
・シリーズは3冊にわたり、受賞作は3作目。単品でも読めるのですが、
まずは1作目である『街の灯』(文春文庫)を読むことを強くオススメします。2作目は単行本『玻璃の天』。
・好奇心旺盛な英子が様々な謎に首を突っ込んでゆく、というスタイル。
そんな英子の運転手となったのがベッキーさん。頭脳明晰、武道の心得もあるスーパー・ウーマン。
彼女は謎解きを直接行わないのですが、謎の答えをわかっていて英子にヒントを与えているような節があります。
・様々な謎解きとともに、物語が進むとベッキーさんの過去なども触れられてゆきます。
そして時代の流れに彼女たちがどのように向き合ってゆくのか。
凛とした、という形容が似合う彼女たちが読んでいて実にすがすがしい。
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★ 『デビュー作『空飛ぶ馬』からはじまる「円紫さん」シリーズについて
(発行は全て創元推理文庫)
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・北村作品中、唯一主人公の名前が付いておらず、「私」で表記されるシリーズ。
文学部の大学生であり、ある程度著者の分身であるような存在。
・1作目で「私」はファンである落語家の円紫さんと縁があって話をする間柄に。
この円紫さんが博覧強記、洞察力に優れ、また推理力に優れるという人物。
「私」が持ち込む様々な謎を聞いただけで解き明かしてしまう。
また「私」を温かく見守ってくれる存在でもあります。
・その作風は「日常の謎」と呼ばれました。事件が起こったりしなくても、
普段のちょっとしたことが十分謎になる。
今こそこういった作品はたくさん見られるようになりましたが、
それらの作品が生まれたのもこの北村作品があったからこそ。
・謎のために謎を作る、というのではなく人の感情のちょっとしたずれ、などをモチーフに謎に仕立て上げる。
そのためミステリだと決め付けて読まなくても、人の物語として十分に楽しめる。
・人の感情、謎、色々な知識、ユーモア、暖かな雰囲気、思わず背筋が伸びる美しい描写・・・
デビュー作にして北村さんのエッセンスがつまっています。
・何よりも、巻を重ねるごとに成長してゆく「私」の姿が読んでいて気持ちがよい。
現在シリーズは5冊目まで出ております。
◆紀伊国屋書店富山店◆
住所 : 富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号 : 076-491-7031 営業時間 10:00〜20:00
店休日 8/26(水)
※8/19はハガキをお持ちの方の特別招待会なのですが、
紀伊國屋書店に関しましては入口にて7Fに行きたい旨をお伝えいただければ入場できます。
◎8月3日の放送は、ポッドキャストでもお聞きいただけます!