★☆★★☆★ 3月2日の 『キノコレ』 ★☆★★☆★
「キノコレ」は、毎月・第1&第3水曜の13:45〜『grace』の中でお送りしています。
今週は、紀伊國屋書店富山店 奥野晃英 さん からオススメの本をご紹介頂きます。
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本日は夢枕獏さんの 『エヴェレスト 神々の山嶺』 をご紹介します。
3/12映画公開を控え、タイトルをご存知の方も多いかと思います。
原作である本作品は、1997年に単行本が集英社から発売、2000年に文庫になりました。
今年、映画化に伴い角川文庫から上下巻で発売されています。
また、一冊本として『エヴェレスト–神々の山嶺』が、上下巻セットよりお安く刊行されています。
夢枕獏さんと言えば、幻想文学やSFのイメージが強い作家さんですが、
本作は世界最高峰エベレストを舞台とした山岳小説で、とてもリアルで読み応えがあります。
エベレスト初登頂は1953年イギリス隊のニュージランド人のヒラリーと現地シェルパのテンジンが通説です。
ただ、その29年も昔、1924年にイギリス第三次エベレスト遠征隊の二人の男マロリーとアーヴィンが
初登頂を成し遂げていたのでは・・・という説があります。
マロリーは「そこに山があるから」のセリフが日本でも有名な登山家で
残念ながら両名共この挑戦時に遭難し、帰らぬ人となりました。
マロリーとアーヴィンは果たして登頂を成功させた後に遭難したのか、
それともその前にすでに帰らぬ人となっていたのか。
その問題を解く鍵は、彼らが持っていたカメラでした。
もし登頂に成功していたなら彼らは頂上で撮影をしたに違いない・・・
そのカメラをたまたま日本人登山家が見つけたところから物語は幕を開けます。
そもそも夢枕さんとヒマラヤの繋がりは、
「ヒマラヤを越えていく鶴」を写真で、続いてTVご覧になったところから始まります。
その光景を見たくなった夢枕さんは、
通常の旅行では許可が下りないヒマラヤ近郊のマナスル山登山隊に同道させてもらい
実際にエベレスト登山のベースキャンプまで向かいました。
吹雪となると前進も後退も出来ず遠くの雪崩の音を背に休む寝袋、
寝る時も脱げない登山ブーツ、
倒壊するテントから脱出するためのナイフなど、
夢枕さんの実際の経験が随所に盛り込まれています。
富士山の頂上で、地上の空気の2/3程度、
夢枕さんが過ごしたベースキャンプで1/2、
そして物語の舞台となる頂上は1/3にしからならないのです。
想像を絶するものの、確かにこの地球上に存在する場所。
この地球上で一番天に近い場所。
その壮絶さと荘厳さが存分に体感できる作品となっております。
また、今回、モンベルブックスから 『神々の山嶺創作ノート』 が発売されました。
東京新聞出版局から出版されていた
山の専門雑誌『岳人』が2014年8月号で休刊したのですが、
その後登山用品アウトドア用品で有名なモンベルの会長が復刊させ、
その書籍として発売されました。
同書によると『神々の山嶺』は全世界で100万部を超えるベストセラーになっているとのことです。
この春、私、一押しの一冊です。
是非、地球上に確かにある非日常の世界に浸ってみてはいかがでしょうでしょうか。
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紀伊国屋書店富山店
住所: 富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00
HP http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/
※店休日 3月は無し
◎ 3月2日の放送は、ポッドキャストでもお聞きいただけます。
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