★☆★★☆★ 3月21日の 『キノコレ』 ★☆★★☆★
「キノコレ」は、毎月・第1&第3月曜の13:45〜『grace』の中でお送りしています。
今週は、紀伊國屋書店富山店 係長 朝加昌良さんのオススメ本です!
■注目の時代小説■
今回は久しぶりに時代小説の紹介。
ここ数年、若い方や女性にも読まれる(とはいっても「歴女」なんて存在も生まれていますが)時代小説、
というのが増えてきているように思えます。
それらの特徴は文体であったり、テーマの取り方であったり、また装丁であったりします。
代表例ともいえるのは『のぼうの城』(和田竜、小学館)。
「でくのぼう」なのぼう様が、城に攻め寄る豊臣勢と対する痛快小説。
圧倒的な人数差、城を守り通せるのか?
こちらは現在文庫になっており、また9月には映画化もされます。
他にも来月文庫になる『哄う合戦屋』(北沢秋、双葉社)は
孤高の合戦屋(という戦の請負人)の生き様を描き、その人物造詣で多くの読者を唸らせました。
そして今回紹介したい本がこちらです。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
★ 『早雲の軍配者』富樫倫太郎 中央公論新社
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
・まず「軍配者」たる耳慣れない言葉をご説明しましょう。
戦においてその戦略を立てたり、策を立案する存在として「軍師」という言葉は分かるかと思いますが、
軍配者はそれら戦における働きでなく、易学によって方角や日時の吉・凶を占い、天候などを見極め、
また軍における作法や儀式をつかさどる、といった仕事をしていたとのことです。
ただし人により得手不得手があるので例えばこの軍配者には易についての働きを行ってもらい、
別の軍配者には戦の時の助言を行ってもらうというような分担もあったとか。
戦国時代の軍師はこの戦の働きに特化し、また大規模な組織に適応したものとも言えそうです。
・次に、主人公。
風摩小太郎、というとある種のイメージがわく方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
大男で戦に強い人物であったり、あるいは多いのは忍者のイメージでしょうか。
しかし、この本の小太郎は違います。賢くも、心優しき少年。
彼がいかにして学び、軍配者になってゆくのかというのが話のメインとなります。
そう、青春小説・成長小説としての味付けが濃いのです。
・タイトルにある「早雲」とは北条早雲のこと。
戦国大名北条氏の開祖にあたる人物ですが、この本では実に聡い統治者、仁者として描かれています。
その早雲に見込まれて、農民であった小太郎は教育を受け、
そして軍配者の教育学校である「足利学校」に編入します。
そこで得た二人の友との友情、また早雲の死などが描かれた後に、小太郎はついに軍配者として国に呼び出されます。
・そして上杉家との戦に同行することになった小太郎、さて彼の活躍やいかに。
・この「軍配者」はシリーズ刊行が決まっており、現在は2巻目の『信玄の軍配者』が発売になっております。
信玄の軍配、といえば山本勘助。実は彼についても本作ではある程度書かれています。
そう、足利学校にて得た二人の友。このうち一人が山本勘助なのです。
そうなると第3巻目でも今一人の友が主題になって書かれることと思われますが、
彼らの行く末にどういった決着を見せるつもりであるのかが楽しみです。
-----------------------------------------------------------------
★紀伊国屋書店富山店からのお知らせ★
-----------------------------------------------------------------
◆紀伊国屋書店富山店 場所は、富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号 076-491-7031 営業時間 10:00〜20:00
・定休日 :3月はなし。
◎3月21日の放送は、ポッドキャストでもお聞きいただけます!
|