PROGRAM

 
2011/01/17 (月)
  • 1月17日のキノコレ

  • 紀伊国屋書店富山店 朝加さん

1月17日のキノコレ[【終了】grace]

 1月17日の 『キノコレ』     

「キノコレ」は、毎月・第1&第3月曜の13:45〜『grace』の中でお送りしています。

今週は、紀伊國屋書店富山店 係長 朝加昌良さんのオススメ本です!


144回直木賞・芥川賞本日決定


本日夕方より両賞の選考会が行われます。

<直木賞候補作>

荻原浩『砂の王国』(講談社)

 候補4回目。ユーモアや人情に定評があり、あえて言えば「泥臭い」
 作風が持ち味(褒め言葉です)。今作はホームレスになった会社員が主人公、その生活描写のリアルもさながら、
 逆転のために考えだしたのが宗教法人を立ち上げることというのが面白い。
 人間の業や幸せとは何かを考えさせるような作品。

犬飼六岐(ろっき)『蛻(もぬけ)』(講談社) 

 初候補。剣豪や岡っ引きといったおなじみの時代小説を書いてきた著者ですが、本作は時代ミステリー。
 庶民の生活を再現した偽の宿場町、そこに住まわされる人々。
 その閉鎖空間で連続殺人が起こる、という構想が何より眼を引きます。

木内昇(のぼり)『漂砂のうたう』(集英社) 

 初候補、こちらも時代小説の書き手。
 明治10年頃、維新の激動が残りつつも、人々が新しい生活に歩みだす頃。
 主人公も御家人の次男という身分を失い、 流れ着いた遊郭にて職を得る。
 その町を、そこに住む人たちを生き生きと描きながら、この物語の向かう先は。

・道尾秀介『月と蟹』(文藝春秋) 

 戦後初となる5回連続のノミネート。
 こどもたちの持つ焦燥感や 暗い影の部分にも眼を向けるのが著者らしい。
 今回は心情描写と、懐かしさの漂う場面描写に力点が。

・貴志祐介『悪の教典』(文藝春秋) 

 各種ミステリランキングで1位、また第1回山田風太郎賞も受賞。
 意外にも著者は直木賞候補になるのは初めて。
 サイコ・パス教師の物語は選考委員にはどう評価されるか。


<芥川賞候補作>

朝吹真理子「きことわ」 

 初候補。デビュー作『流跡』を読みましたが、言葉の使い方と瑞々しい感性には感心させられました。詩のような趣があります。

小谷野敦(こやのとん)『母子寮前」(文藝春秋) 

 評論家として既に名が知れている著者の書いた作品。
 小説以外では文芸評論だけでなく『もてない男』(ちくま新書)のような恋愛論も書いています。

田中慎弥「第三紀層の魚」 

 候補3回目。『実験』(新潮社)では三島由紀夫賞も受賞しており、文学賞の受賞も多い。

西村賢太「苦役列車」 

 候補3回目、インパクトの強い私小説の書き手。
 藤澤清造という作家に心酔しており、小説でも同じく彼に心酔する主人公を描く。

穂田川洋山(ほたかわようさん)「あぶらびれ」 

 
候補2回目、前作のデビュー作『自由高さH』 (文藝春秋)に続いての候補。前作は評価がはっきり分かれました。


注目のデビュー作


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 注目のデビュー作!! 『盤上のアルファ』(塩田武士、講談社)
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選考会で満場一致で受賞が決まった第5回小説現代長編新人賞受賞作。

性格の悪さで上司に嫌われ、右も左もわからない部署に回された新聞記者、秋葉。
風変わりな性格で、働く場も住む家も失い、ただプロ棋士を目指す真田。
2人の33歳の男が出会い、熱い物語を繰り広げる。

テーマは将棋。
とはいっても、将棋を知らない人でも楽しめると思います。
この物語の面白さの本質は将棋そのものではなく、将棋をめぐる人々だからです。

将棋・囲碁担当に配置変更となった秋葉は、不貞腐れた日々を過ごす。
そんなある日、飲み屋で将棋についての文句をたれていると、そこに居合わせたのが真田。
二人は喧嘩になり、しかしその後色々とあって、真田は秋葉の家に居候することに。
本来プロ棋士になるためには一定の年齢以内に四段を取得しなければならず、
真田はその年齢を超えているのですが、実はある条件を満たすとアマからプロへとなれるのだとか。
その厳しい挑戦を行う真田と、いつしか将棋の魅力に引き込まれていく秋葉。さてこの挑戦の行く末は。

物語の展開としては、破天荒でご都合的といえるかもしれません。
しかしその無茶さがマイナスにならず、むしろ痛快であり、読ませる勢いをつけているのがこの物語の魅力でしょう。

また、二人の会話の面白さも魅力のひとつ。
関西人が2人いればボケとツコミの会話が始まる、なんて言葉がありますが、
リズムよく繰り広げられる会話にはにやりとさせられました。
ちなみにどちらかと言えば秋葉が主にツッコミ役で、またさまざまな迷惑をこうむる役でもあるのですが。

小気味いい、という感想が実に似合う読み口でした。
また、伏線が色々と仕掛けられていて、
時にそれがジョークに使われ、また時にストーリーの核心に関わるなど、
作者が読む人を楽しませようと考えているように思えます。

スカッとする読書を求めている方にお勧めの1冊。


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紀伊国屋書店富山店からのお知らせ
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◆紀伊国屋書店富山店   場所は、富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F   
  電話番号  076-491-7031   営業時間 10:00〜20:00  

・定休日 : 1月は26日(水)が定休日。

◎1月17日の放送は、ポッドキャストでもお聞きいただけます!


【終了】grace


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