今週は、紀伊國屋書店富山店 係長 朝加昌良さんのオススメ本です!
■このミス発表■
・国内1位は『悪の教典』(貴志祐介、文藝春秋)
文春ミステリ同様、こちらが1位。
学校を舞台にサイコ・パスの教師が引き起こす事件。
この人物に惹かれながら、どっぷりはまれる約850ページの大作、上下巻。
・海外1位は『愛おしい骨』(キャロル・オコンネル、東京創元社)。
森に出向いた兄弟、しかし帰ってきたのは兄だけだった。
それから20年、里帰りした彼のもとに誰かが訪れている。
そう、玄関先に死んだ弟の骨を一つずつ置いて。
その意図は、また20年前の事件の真相は。
■今年のミステリ、こちらに注目!■
無論W1位の『悪の教典』も読んでほしいのですが、
見た目のボリュームからミステリを読みなれてない方にはちょっと敷居が高いかもしれません。
そこで様々なミステリランキングに共通して入っており、かつ読みやすい作品はどれか?
という視点で次の本を選んでみました。
★『謎解きはディナ−のあとで』(東川篤(とく)哉(や) 、小学館) 文春10位、本格ミステリ9位
・ユーモアミステリの書き手として評価を得ている著者の、ブレイク作品となりそうな1冊。短編集。
発売以来よく売れています。
・主人公の一人、女刑事は実はなんと大富豪のお嬢様。
そして難事件を解くのは、その執事・・・というのが何ともキャッチー。
おまけにこの執事、とても口が悪い。そのためお嬢様との掛け合いが実に楽しいことに。
ちなみに執事は老執事ではなく若くてイケメン。おまけにSです(笑)
本の表紙イラストは中村佑介さんで、作品の雰囲気に実によくあっています。
・謎解きの方は短編集なので1つ1つが少し駆け足になってしまっているかな? とは思いますが
ドタバタ風味にまぎれさせてさりげなくヒントを見せるなどの作者の工夫が感じられました。
(本格ミステリにランクインしているのもそのためでしょう)。
・好評を受けてシリーズ化決定、続編も書かれていくようです。
〜他にもこんな作品が読みやすいと思います
★『ノンストップ!』サイモン・カーニック 文春文庫 文春8位、このミス15位
・海外ミステリは取っつきづらい、また値段も高いと思われている方にぜひおすすめ(860円です)。
いわゆる「巻き込まれ型」で、始まってすぐ話が動き出します。
友人から突然の電話、様子がおかしく誰かに追い回されている。
そしてその友人は襲撃されて主人公の住所をしゃべってしまう。
友人は殺され、そこから僕は追い回される羽目に・・・さらに妻も失踪、
おまけに僕は殺人犯として容疑者にされていて警察にも追われる!
いったい何が起こっているのか?
次々と迫り来る災難と、息も付かせぬ展開。まさにタイトル通りの一気読み作品です。
★『こめぐら』倉知淳 東京創元社 このミス17位、本格ミステリ10位
・滅多に新作の出ない倉知さん
(ウィキペディアにも「冷蔵庫が空にならないと仕事しない」と書かれる始末)ですが、
なんとランキング投票締切間近に2冊同時刊行。
『こめぐら』『なぎなた』という2冊の短編集のうち、
『こめぐら』がよりユーモラスで読みやすいかと思います。
脱力系からパロディ系まで、オチがさまざまなミステリ。
後書きで著者が「今まで初心者の方にも楽しく読んでもらえることを意識してきた」
というようなことを述べていますが、この本もまさしく、といった内容に。
中でも最初にある作品「Aカップの男たち」は一番の注目作です、色んな意味で。
■キノベス、選んでます■