★☆★★☆★ 10月4日の 『キノコレ』 ★☆★★☆★
「キノコレ」は、毎月・第1&第3月曜の13:45〜『grace』の中でお送りしています。
今週は、紀伊國屋書店富山店 係長 朝加昌良さんのオススメ本です!
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★ 『獣の奏者』 上橋菜穂子 講談社文庫
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・今回は今まで選んでないジャンル、ということで「ファンタジー」の作品をご紹介。
・とはいえ、一般的なファンタジー小説のイメージは、この作品を読めば変わるのではないでしょうか?
もちろんそこには現実には無い生物も出てきますし、魔法的な要素もあります。
しかし一本筋の通った、大きな物語の存在を感じられるのではないでしょうか。
ファンタジーは決して児童だけの文学ではない、それを証明する作品です。
・著者の上橋さんは文化人類学者。アボリジニの研究が専攻。
そのためその世界の成り立ちや文化、といったものに造詣が深い。
そういう知識を活かしつつも、「物語」として魅力ある舞台を作るために
既存の世界ではなく一から世界を作り上げる、ということが特徴です。
・物語の説明に移りましょう。
主人公エリンは、「闘蛇」という架空の獣を世話する一族に生まれた少女です。
「闘蛇」…闘う蛇、と書くこの生きもの、蛇状の体に鋭い爪、硬いうろこをもつ強力な獣。
野生のそれも恐ろしいのですが、飼われることにより軍勢としても利用されています。
そしてその天敵ともいえるのが「王獣」、王の獣と書きます。
「闘蛇」は軍の象徴ですがそれを喰らう「王獣」はこの世界では王家の象徴たる存在です。
・この世界を象徴するこの2種類の獣の描写も実にリアルで、実際に存在しそうな気分にさせられます。
この2体の獣の成り立ちやあり方、これも物語の中心部分に関わるもので、興味深い。
・そして主人公エリンはこの2種類の獣と大きく関わって成長してゆくことになります。
先も述べたように「闘蛇」を世話する一族として生活していたエリン、
しかし物語の冒頭、その「闘蛇」たちが突然死するという事件がおき、
その責任を問われる形で彼女の母親は死刑となり、エリンは天涯孤独の身になるのです。
苦難にあいながらも、獣の医者を目指して成長してゆく少女。
獣たちと向き合い、また己とも向き合い、母の過去とも向き合う。
壮大かつ真摯な物語に引き込まれるのはもちろん、読んでいてこの主人公を応援してしまうでしょう。
・やがてエリンは野生の「王獣」と出会い、
そのことが彼女の運命だけでなくこの王国の運命をも変えてゆくことになります。
獣たちの謎、王国の謎、そしてエリンの行く末の結末は!?
・この2部で物語はいったん閉じます。
そして予定ではこの2巻で終わりだったはずが、
嬉しいことに続編の3巻・4巻も発売されました。そして9月には外伝も発売されています。
また、この著者の作品をもっと読みたいという方は
もう1つの代表作である「守り人」シリーズにもぜひ手を伸ばしてください。
ただいま新潮文庫でも徐々に刊行されていっております。
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★紀伊国屋書店富山店からのお知らせ★
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<カレンダー、手帳フェア開催>
店内中央Aカウンター付近にて開催(カレンダーは本日4日立ち上げです)。
もちろんまだ未入荷の商品もありますが、順次拡大してゆきます。
日記に関しても近々開催いたします。
◆紀伊国屋書店富山店 場所は、富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号 076-491-7031 営業時間 10:00〜20:00
・10月定休日は、6日、27日です。
◎10月4日の放送は、ポッドキャストでもお聞きいただけます!
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