ブログトップページはコチラ

『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

2021年9月22日

2019年に発売された

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、お読みになりましたか?
7月に文庫化されたことで最近また話題になっているようです。

『ぼくイエ』は、イギリスに住む著者の中学生の息子について書かれた本です。
いじめ、喧嘩、差別のある中学に入学した息子君が、
それぞれの問題について真剣に向き合い
お母さんと一緒に何が正しいのか悩み、考えていくという内容で、
80万部を超えるベストセラーとなりました。
私はラジオでもご紹介し、2019年に読んで良かった本の1位に選びました。

●私の本の感想は コチラ

今日ご紹介するのは、その『ぼくイエ』の著書、ブレイディみかこさんの新作です。

『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ(文藝春秋)』

『ぼくイエ』にも「エンパシー」という言葉が登場していました。

『ぼくイエ』では、「エンパシー」とは「共感」ではない他者を理解する言葉で、
「誰かの靴を履く」ことだと解説されていました。

ただ、欧米ではエンパシーをめぐる様々な議論があり、
中にはエンパシーは良くないという考えの人もいるそうです。
そういった様々な議論を取り上げながら、
エンパシーとは何かについて掘り下げたのがこの本で、
『ぼくイエ』の副読本とも言えるそうです。

辞書によると、エンパシーは他者の感情や経験などを理解する能力です。
心で感じるものではなく「能力」なんですね。
日本語訳ではよく「共感」と訳されることが多いそうですが、
エンパシーは共感しなくてもいいのとか。
違う考えを持つ相手に対して、その人の立場だったら自分はどうだろう
と想像してみる知的作業が「エンパシー」なんですって。

つまり、他者の靴を履いてみるということです。

でも、中には相手のことを考えているつもりが
自分の靴で他者の領域をずかずか歩いているなんてこともあるのだとか。
たしかにSNSなどを見ていると、そういう方多いですよね。。。

間違えずに「他者の靴を履く」にはどうしたらいいのか。
その答えがこの本には書かれています。

大変面白い本でした!まるで楽しい大学の授業を受けている気分でした。
かなり濃い内容で読みごたえがあるものの決して難しすぎるわけではなく、
「エンパシー」について丁寧に分析されているので、
納得しながら読み進めることができました。
読み終えたときには、久しぶりに「学んだー!」という気持ちでした。(笑)

印象に残った箇所をいくつかピックアップします。

著者の息子君の学校では、『ロミオとジュリエット』の主人公になりきって
ラブレターを書くという課題が出たそうです。
それも最初の週は男女関係なく全員がロミオになりラップ調で
次の週は全員がジュリエットになってクラシックなラブレターを書け、
というものだったのだとか。

他には、赤ん坊からエンパシーを教わる
「ルーツ・オブ・エンパシー」というものもあるそうです。
赤ん坊の反応や感情表現、成長を見ることで
エンパシーを育てることができるんですって。
たとえば、おもちゃが手に届かずイライラしている赤ちゃんを見ながら、
あなたはどんな時にイライラする?と子どもたちに聞くのだとか。

他者の感情を想像しながら話し合うことで、
子どもたちは自分の意見を言うことができるようになるそうです。

知識を詰め込むだけではなく、
想像して考えるといった「ソフト・スキル」も大事なのですよね。
そして、このスキルは子どもたちだけでなく大人にも、いや、大人にこそ必要です。

それから、本のタイトルには「アナ—キック・エンパシー」とあります。
ブレイディさんの言うところのアナーキーとは?
詳しくは、本を読んでみてね。

そうそう!

ブレイディさんと言いますと、
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の完結編となる
続編『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』が
9月16日発売されたそうです。

こちらも読まねば!

yukikotajima 11:10 am