『52ヘルツのクジラたち』
2021年4月21日
先週の水曜日、全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ
「本屋大賞」の授賞式が行われました。
◎本屋大賞の公式サイトは コチラ
ちょうどgraceの生放送中に受賞作が発表され、
大賞に町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)』が選ばれました。
先週の放送では、ノミネート作の『お探し物は図書室まで』をご紹介しましたが、
こちらは惜しくも2位でした。
◎私の本の紹介は コチラ
ちなみに3位は、私が1位予想をした
伊吹有喜さんの『犬がいた季節(双葉社)』でした。
こちらも惜しかった!
◎私の本の紹介は コチラ
私はノミネートされた10作品のうち7作品読んでいたにもかかわらず、
大賞受賞作は読んでいなかったので早速本屋さんに買いに行き、読んでみました。
もう本の帯には「本屋大賞第1位」とありました。はやいっ!
なぜ私がこれまでこの本を読まなかったのかというと、それには理由があります。
いや、言い訳ですね。(笑)
話題になっているのは知っていたのですが、
本の紹介に「孤独」や「虐待」といった言葉があり、
本を読んで辛い思いを味わいたくないと思ってしまったのです。
また、去年からのコロナ禍で孤独を感じている方も多いですし、
できれば、読んだ後に元気になったり、何か気付きを得たり、
単純に面白かったりするような本を紹介したいと、
特に去年はそんな思いで本を選んでいました。
でも、読む前のイメージだけで決めつけてはいけませんね。
『52ヘルツのクジラたち』は、確かに読むのが辛くなるような描写もあります。
でも、決して辛く暗いだけのお話ではありませんでした。
なんなら読んだ後に嫌な気持ちになるどころか、心が軽くなっていました。
この作品は本屋大賞を受賞したことで
すでに様々なメディアで紹介されていますが、
私からもどんな作品なのか簡単にご紹介しますね。
タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、
他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、
世界に一頭しかいないクジラのことだそうです。
仲間がいても何も届かないし、届けられないため、
世界で一番孤独だと言われているのだとか。
そして、この物語にも孤独を感じている人たちが出てきます。
主人公はアラサーのキナコという女性です。
物語は彼女が大分の亡き祖母の家に移り住んだところから始まります。
ある理由からひとりでそっと生きていきたいと思い、
携帯電話も解約し、親しかった友人にも連絡せず、
たった一人で大分の田舎町に引っ越します。
とはいえ田舎町でひっそりというのは無理な話で、
町の誰ともと交流せず仕事もしていないため
町の住民たちから「何か訳ありに違いない」と噂の対象になってしまいます。
そんなある日、キナコは親の虐待で口がきけなくなった少年に出会います。
キナコは少年が自分と同じ匂いがすることに気付きます。
自分と同じ「孤独の匂い」が。
孤独の匂いは心にしみつき、なかなか消えないのだとか。
キナコは少年を放っておくことができず、彼との交流がはじまります。
ひとりでひっそり暮らしていきたいと思ったキナコでしたが、
この少年をはじめ様々な人と触れ合うことで
キナコは避けていた自分の過去とも向き合うようになります。
本だから声は聞こえないはずなのだけど、
私にはキナコの声が変化していくのが感じられました。
キナコがどう成長していくかは、
ぜひ本を読みながら見守っていただければと思います。
そうそう!
最後に、本の帯の裏側をチェックするのをお忘れなく〜。
なんとスピンオフが収録されているのです。
この短編を読んだら、また最初から本編を読みたくなってしまったのですが、
最初のパートは、1度目とは全く異なる物語に感じられました。
特に1ページ目は、笑いながら読んでしまいました。
180度物語が変わるってすごいわ。
この本を読む前は、暗く辛い物語はちょっと…と思っていたけれど、
まさかこの本を読んで笑うことになるとは。
やはり読書って面白い。