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『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』

2020年11月4日

先日、本屋さんに行った時、
次はどんな本を読もうかしらと店内をぶらぶら歩きながら
まだまだ知らない本がなんとたくさんあることか!と思ったら、
どの本を選べばいいのかわからなくなり、こんな時はプロに頼ろうと
紀伊國屋書店富山店の書店員さんに相談。

小説以外の例えばエッセイでオススメは?と聞いたところ、
今一押しのエッセイとして、この本を教えていただきました。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
/岸田奈美(きしだ・なみ)【小学館】』

本の帯を見ると、阿川佐和子さんのお名前が。

阿川さんというと、お母様が認知症になり、
その体験を小説にされていたので、
もしやこのエッセイもそういった内容かしら?
本のタイトルにも「家族」が入っているし。
と思ったのですが、違いました。

本の帯の下のほうに小さくこう書かれていました

車いすユーザーの母
知的障害のある弟
急逝した父

情報過多な日々をつづる笑いと涙の自伝エッセイ

ん?「笑い」のエッセイ?こんなに大変そうな状況なのに?
と頭の中にたくさんの「?」が浮かびつつ、
書店員さんの一押しだしと読んでみることにしました。

著者の岸田奈美(きしだ・なみ)さんは、
100文字で済むことを2000文字で伝える1991年生まれの作家さんで、
ブログサービスのnoteやTwitterで話題となっているそうです

このエッセイは、岸田さんの家族の日々が綴られています。

岸田さんは、中学生の時にお父様が急逝し、
高校生の時にはお母様が病気によって車いす生活になり、
4歳年下の弟は生まれつきダウン症で知的障害があります。

ですが、岸田さんの文章はとにかく明るいのです。

もちろん悩んだり落ち込んだりもしていますよ。
でも、どのエッセイも読んだ後は優しい気持ちになれます。

特にダウン症の弟さんを見つめる優しい眼差しが印象的でした。
エッセイには弟さんのいいところがたくさん紹介されていますので、
きっと読者はみんな、弟さんのことが好きになると思います。

ところで、あなたはご家族のいいところをいくつ挙げられるでしょう?

岸田さんは、弟さんのことをいつも見ているので、
いいところにも気付くのでしょうね。

弟さんのエピソードは色々と紹介されていますが、
コンビニで万引きを疑われた弟が再び一人でコンビニに行った時に、
こっそり尾行したエピソードは、涙なしには読めませんでした。
あ、でもこれはいい涙ですよ。

岸田さんが弟さんに向けた言葉が素敵だったのでご紹介します。

「行ったことのない場所に、どんどん行け。助けられた分だけ、助け返せ」

素敵なお姉ちゃんだ!と思ってページをめくっていったところ、
なんと岸田さん自身が弟さんに助けられることになります。

いったい岸田さんに何があって
弟さんはお姉ちゃんをどのように助けたのかについては、
ぜひ本を読んでいただきたいのですが、このエピソードも良かった!
私自身も助けられた気分で心が軽くなりました。

岸田さんのエッセイは、文章がとても素直なのです。
お友達にそのまま喋っているような飾らない表現ですので、
まるで彼女のお喋りを聞いている気分で読むことができました。

この素直さが彼女の魅力であり、
大勢のファンがいる理由なのでしょうね。

また、彼女の文章からは表情が見えます。基本的には笑顔が。
笑いながら文章を書いているのが伝わってくるエッセイでした。

そんな彼女の笑顔を実際に見ることができます。
この本には岸田家のご家族の写真が挟まれているのです。

また、本のカバーを外すこともお忘れなく。
こちらにも素敵な家族の写真がありますので。

この本を読んだ後の私もきっといい表情をしていたと思います。(笑)
人を信じてみたくなる、優しさにあふれたエッセイでした。

yukikotajima 9:16 am