生命式
2019年10月30日
こんにちは。
今年も富山マラソンに出場し、
なんとか完走しました!
応援ありがとうございました。
富山マラソンに関しては、
私のもう一つのブログ 続・ゆきれぽ
に書いていますので、よかったらお読みください。
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さて、今日ご紹介する本は、
『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した
村田沙耶香さんの新作です。
『生命式(河出書房新社)』
先日発売されたばかりです。
この本を読むには色々な注意があります。
まず、食事後に読むのはやめたほうがいいです。
もしかしたら気持ち悪くなってしまうかもしれません。
また、あまりにも常識を超えたお話なので、
その世界に耐えられない人もいるかもしれません。
でも。
常識や想像を超えた世界を覗いてみたいという方にはオススメです。
どうぞ読んでください。
村田さんの新作『生命式』は、12の作品が収録された短編集です。
芥川賞受賞作『コンビニ人間』でも独特の世界観を描いていましたが、
今回はさらに独特です。
本の帯には「脳そのものを揺さぶる」とか
「文学史上、最も危険な短編集!」などと書かれています。
正直私は、本を手に取ったとき「そんな、大げさな!」と思ったのですが、
まったく大げさではありませんでした。
心揺さぶる作品は数多くあれど、
脳そのものをゆさぶる作品はそこまで多くありません。
どんな作品が収録されているのか、少しご紹介しましょう。
まず表題作の「生命式」とは、
亡くなった人間を食べる新たなお葬式のことです。
今から30年後。
人が亡くなると「生命式」を行うのがスタンダードになっています。
もう、この描写を読んだだけで「うっ」となりました。
でも、この時代では当たり前のことになっていて、
人間の食べ方についてその調理法が細かく紹介されています。
そして、このお話のあとも常識をはるかに超えた世界の物語が続いていきます。
例えば、亡くなった人の骨や歯、髪の毛を
装飾品や家具、セーターに再利用する物語もあります。
「冬は人毛100%が最高だよね」なんて会話が普通に繰り広げられています。
でも、どうしてもそれを受け入れられない人もいます。
「気持ち悪い」と。
ところが、亡くなった人間を素材として活用することが当たり前の時代では、
「気持ち悪い」と言うことが変だと思われてしまいます。
ここまでの私の紹介で、それこそ「気持ち悪い」と思う方もいるかもしれません。
でも、『生命式』は、気持ち悪い世界をただ描いているだけではありません。
常識とは?普通とは?世間とは?
について嫌でも考えさせられます。
今後、もしかしたら今までタブーとされていたものが
当たり前になる時代がやってくるかもしれません。
そんな時、あなたはすぐに受け入れることができそうですか。
それとも嫌悪感を感じるでしょうか。
すでに今の時代にもなんかおかしいなと感じることはありませんか?
なんでも受け入れるのではなく、
おかしいことに対しては?「なぜ?」と疑うことが大事なのかも。
『生命式』は確かに、脳が揺さぶられました。
そうそう!もう少し読みやすい作品もあります。
例えば、自分には「性格がない」と思っている女性の物語。
この女性は、周りの人が自分のことをどう思っているかで、
自分のキャラが決まり、あだ名も変わります。
地元ではしっかり者の印象のため「委員長」
大学時代は愛されキャラの「姫」、
他にも天然キャラ、ミステリアス、男勝りなど
コミュニティーによってキャラも喋り方も服装も変わります。
でも、彼女が結婚をすることになり、
どのキャラで結婚式をすればいいのか悩みます。
果たして、彼女が選んだキャラは?
彼女ほどでなくても、きっと誰もが場所によってキャラや印象は異なると思います。
という感じで、『生命式』は、ただ読むだけではなく、
自分だったらどう思う?どうする?
と常に自分に問いかけながら読んでいった本でした。
気になる方は、ぜひお読みください。
でも、最初にお伝えした注意事項は守ってね。(笑)