ブログトップページはコチラ

湊かなえ『未来』 

2018年6月27日

来月18日に第159回直木賞と芥川賞が発表されます。

今日ご紹介するのは、その直木賞の候補作、
湊かなえさんの『未来(双葉社)』です。

湊さんといったら、2008年のデビュー作『告白』が有名ですよね。
本屋大賞を受賞し、映画化もされました。

その他、『高校入試』『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』
などもドラマ化されました。

つまり、人気作家さんです!

湊かなえさんは、その作風からイヤミスの女王とも呼ばれています。
イヤミスというのは、読んだ後に嫌な気分になるミステリーのことです。

嫌な気分になるなら読まなければいいのに…と思われそうですが、
あえて後味の悪さを楽しむ読者が多いようです。
まあ、私もそんな一人なのですが。

***

今日は、そんな湊さんの最新作『未来』をご紹介します。
『告白』から10年の湊ワールドの集大成となる長編ミステリーです。

『未来』と聞くと、未来は明るい!と想像してしまいそうですが、
本の表紙を見れば、真っ黒の装丁にゴールドで「未来」と書かれているだけ。

ブラックとゴールドの表紙を見る限りは
明るい未来という想像はしづらく、
どちらかというと恐ろしさを感じるほどです。
でも、よく見ると、鳥が羽ばたいているイラストがあり、
もしかしたら救いのある話なのかもしれない!
と思って本のページをめくってみました。

結末がどのようなものなのかは
ネタバレになりますので言いませんが、
ページをめくる手は止まることなく
ノンストップでめくり続けてしまったほど
夢中で読みすすめてしまいました。

***

簡単に物語をご紹介しましょう。

主人公は10歳の章子(あきこ)です。
ある日、30歳の「大人章子」から未来の手紙が届きます。

10歳の章子は、大人章子への返事として自分の思いを日記に綴っていきます。

その頃の章子は大好きなパパが亡くなり、
時々「人形」のようなってしまうママと二人で暮らしていたのですが、
一日中寝ているだけのママとの暮らしは決して楽ではありませんでした。

でも、大人章子の手紙には「20年後の自分は幸せだ」と書かれています。
今が辛くても未来の私は幸せなのか、と思うだけで章子は元気が出るのでした。

ところが、中学に入っても章子は幸せにはなれず…。

物語の後半は章子以外の登場人物たちの話へと変わります。
そして、彼らも皆、何かしらの悩みを抱えており、
と紹介すると、まるで辛い話のオンパレードなの?と思われそうですが、
それだけの話ではありませんのでご安心ください。

たとえば。
もめごとを起こしている二人がいたとします。
片方の話だけを聞く限りでは、相手が100パーセント悪いように思えるけれど、
もういっぽうの話を聞いて、印象ががらりと変わることってありませんか?

この物語は、まさにそう感じることの連続で、
本当はそういうことだったのか…と、あとから理解することが多く、
話が進めば進むほど、それぞれの人物の印象ががらりと変わっていきました。

物語の面白さを実感、堪能した一冊でした。

湊さんの作品は、あの後味の悪さが好きという方もいれば、
それが苦手という方もいらっしゃると思うのですが、
この作品は、そんな方も楽しめるのではないかしら。

読み終えた後、本を閉じて、あらためて本の表紙を見たとき、
ふと、ゴールドの未来が輝いて見えました。
読む前はまったく気が付きませんでした。
もしかしたら、このゴールドには作者の願いが込められているのかなあ、
なんて思ったのですが、これはあくまでも私の想像です。
でも、勝手にそう思うことにします。(笑)

この作品もいずれ映像化されそうな予感大!

yukikotajima 12:37 pm