往復書簡 初恋と不倫
2017年7月26日
私は、小説はもちろん、映画やドラマといった「物語」が好きです。
今年に入ってからはまったドラマは「カルテット」です。
あのテンポのいい会話劇の虜になりました。
本筋とは全く異なるどうでもいい内容の会話が繰り広げられる度に
ニヤニヤが止まりませんでした。
いったいこの会話はどこに向かっていくんだろう、
とわくわくしながら彼らの会話を楽しんでいました。
だからドラマが終わってしまったあとは、
密かにカルテットロスになっていました。
そろそろ「みぞみぞ※」したいなあと思っていたら、
先日本屋さんで「カルテット」と書かれた本と出合いました。
(※みぞみぞは、ドラマでおなじみの表現です。
ご覧になっておらず、?という方は無視してください)
しかも、著者は「坂元裕二」とあります。
「カルテット」の脚本家じゃないか!
と思わず、わーと声を出してしまいました。
今日ご紹介するのは、まさに私がハイテンションで手にした本
坂元裕二さんの『往復書簡 初恋と不倫(リトルモア)』です。
2つの作品が収録されていますが、
どちらもタイトルにあるとおり「往復書簡」で構成されています。
ト書きは一切なく、手紙かメールのみの会話で綴られています。
まるで人のメールを盗み見している気分です。
読み始めてすぐ、まさに「カルテット」だ!と思いました。
普通のメールのやりとりの中に、どうでもいい会話が突然はさまれていくのです。
例えば突然「ラジオ体操第一の好きな箇所を教えてください」などと聞いたり。
本筋からずれてばかりです。でも、そのずれが楽しい。
私は、カフェでこの本を読んでいたのですが、
笑いをこらえるのに必死でした。
ちなみに、2つの物語は、
「不帰(かえらず)の初恋、海老名SA」
「カラシニコフ不倫海峡」
です。
最初が「初恋」で次が「不倫」がテーマとなっています。
そして、なんとびっくり!
いずれも2012年と2014年に朗読劇として上演されているのです。
ちなみに私は主人公の男性のイメージは高橋一生さんだったのですが、
出演されていました!
「不帰(かえらず)の初恋、海老名SA」は、
中学時代の男女の手紙のやりとりから始まり、
後半は大人になった二人のメールによる会話が繰り広げられます。
一方の「カラシニコフ不倫海峡」は、
ある男性のところに迷惑メールらしきものが届くところから始まります。
メールを送ったのは、ある女性なのですが、
彼女から意外な事実を告げられます。
この二人は全く赤の他人ではなく、ある共通点があったのです。
メールをやり取りするうちに徐々に距離が縮まっていき、
メールの内容も変化していきます。
その二人のやり取りが最高に面白い!笑えます。
例えば、男性が送ったどうでもいい内容に対する女性の返信が
「文字化けして読めませんでした」
ですよ。(笑)
笑いました。ああ、なんて素晴らしい返信!
また、この男性の名は「待田(まちだ)」というのですが、
あまりにも怒っている男性に対しての返信が
「「待田」の「待」を「侍」にしてみたのだけど気付きましたか」
です。(笑)
会話を無視してます。
この女性に限らず、結構会話がポンポン飛ぶ女性って結構いますよね。
(普段の私もそうかも。笑)
男性はすっかり自由奔放な女性に振り回されています。
そんな二人のやり取りに笑いつつも
物語は、決して明るいだけではありません。
ただ、わははと笑って終わらないところが坂本さんらしいなあと思いました。
終わり方も、わーお、こうきたか!という
さすがのラストでした。どちらの作品も。
私、この本を読んで思ったことがあります。
絵文字やスタンプ使うの、やめようかなと。
この作品は、手紙やメールのやり取りだけで構成されているのですが、
会話だけだからこそ面白いのです。
絵文字やスタンプは一切ありません。
私も文章だけでこんな風に楽しく会話してみたいなと思いまして。
すっかり影響を受けてしまいました。単純です…。
ああ、この作品の朗読劇。再演してくれないかしら。