冷蔵庫を抱きしめて
2015年4月22日
今日ご紹介する本は、荻原浩(おぎわら・ひろし)さんの
『冷蔵庫を抱きしめて(新潮社)』
です。
荻原さんといいますと、
渡辺謙さん主演で映画化もされた『明日の記憶』が有名ですが、
私は新幹線内で読めるフリーペーパー
「トランヴェール」の旅エッセイも好きでした。
でした、と過去形で書きましたが、
実は先月で連載が終わってしまったのです。
さみしい…
と思っていたら、新刊が出ていました。
やったー!
『冷蔵庫を抱きしめて』という短編集です。
タイトルを見ただけでは、全く何の話かわかりませんでした。
表紙のイラストは、タイトル通り女性が冷蔵庫を抱きしめている絵で、
本屋さんで見るとかなりインパクトがあります。
内容は、現代人の心の闇を描いた短編集です。
人知れず悩んでいること、あなたにもありませんか。
子供のようにワーワー泣き叫んだり暴れたりしたら
楽になるかもしれないと思うけれど、
そんなの絶対にできない。
だから、我慢をするしかない。
心に鍵をかけてしまえばいい、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、忘れたふり、気づかないふりをしただけでは、何も変わらないのですよね。
この本にも、心に闇を抱えている方たちがたくさん登場します。
何かしら悩みを抱えている方は、
きっと、この本の登場人物たちと自分自身を重ねてしまうんじゃないかな。
これは自分だ、と。
そして、彼らがどのように心の闇と闘っていくのか気になり、
ページをめくる手が止まらなくなると思います。
私は、止まらなくなりました。
***
私が、もっとも心動をかされたのは、最初に収録された作品。
主人公は、2歳の娘をもつシングルマザーです。
彼女は付き合っている男性からDVを受けています。
その暴力は娘にも向けられ、
娘を守るため、彼女は男性に気付かれないよう、あることを始めます。
同じように暴力に苦しむ女性たちの中には、
この方法があったか!とこれを始める人が増えるかも!
このお話を最後まで読んだとき、涙が出ました。
他にも、マスクをつけないと人前に出られなくなってしまった男性の話や
心の中で思ったことを無意識のうちに口に出してしまう男性の話などがあります。
この無意識に喋ってしまう男性は、デパートの洋服売り場の店員をしているのですが、
太めの女性には「クイーンサイズコーナーはあちらです」、
香水がきつめの女性には「くさい」などと言ってしまうのです。
悪気はないんです。
だって彼には口に出したという自覚がないから。
でもばっちり相手に聞かれているのですが。
さて、この男性は結局どうしたと思いますか?
彼は、いろいろ頑張ります。前向きに。
そして…。
といったお話が全部で8話収録されています。
***
まもなく5月。
5月病なんて言葉もありますが、ちょうど疲れの出てきやすい頃ですよね。
新年度から気合を入れて頑張ってきたものの、
ちょっと疲れちゃったなという方や、
私さえ我慢すればいいんだと心に鍵をかけてしまっている方、
試しに読んでみて下さい。
ちなみに、本の帯には、こう書かれています。
「あなたの心、解放します」
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それから、この本を読む時は、最後までしっかりページをめくってくださいね。
なぜかって?
それは読んでのお楽しみ!