満願
2014年4月30日
ゴールデンウィーク前半は楽しまれましたか?
今週末からのゴールデンウィーク後半は、どのように過ごす予定でしょうか?
まだわからないなあという方は、本の世界を楽しんでみては?
でも、連休と言っても何かと予定が詰まっていて、
実はそんなに自分の時間が無い…という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時間が無い方でも、例えば、毎晩寝る前に少しずつ読める本があります。
その本は6話収録されている短編集なのですが、
短編と言いつつも、それぞれ読み応えがありますので、
まるで、6冊分の本を読んだ気分になれます。
そんな一冊読んだだけで、たくさん読んだ気分にさせてくれる本とは、こちら。
『満願(まんがん)/米澤穂信著(よねざわ・ほのぶ)/新潮社』
この春出たばかりの本です。
米澤穂信さんというと、
映画化もされた『インシテミル』が有名でしょうか。
今回の『満願』は、6つの奇妙な事件が収められたミステリの短編集です。
どんなお話が入っているのか、いくつかご紹介しましょう。
交番勤務の警官の部下の葬儀から始まる「夜警」。
両親が離婚した中学生姉妹の姉とその母の目線で綴られた「柘榴」。
都市伝説について調べているフリーライターが主人公の「関守」。
など、6つのお話が収められています。
最後の「関守」を詳しくご紹介。
フリーライターの主人公が、
都市伝説の取材のためにあるドライブインを訪れます。
彼は近くの峠で年に一度ドライバーたちが崖の下に落下して亡くなるという
奇妙な事故を調べています。
古びたドライブインはおばあさんが一人。
彼女にそれとなく話しかけ、徐々に事故の話をふっていくのですが・・・
この続きは、是非直接本で確認してください。
・・・
どの作品も淡々とした文章なのだけど、読みながら嫌な感触があるのです。
笑顔なんだけど、一瞬見せる無表情が
とてつもなく恐ろしく感じられらことってありますよね?
本当は何を思っているんだろうって。
そういった怖さが所々に感じられます。
そして、警戒しつつ本を読むことになるのですが、
にもかかわらず、最後に思いもよらなかった本性や事実に出合ってしまい、
ひいいっ〜!となるわけです。
しかも6回。
つまり全ての作品の最後に、ひんやりとしたものを感じたのでした。
でも、その感覚は一つとして同じものはありません。
バラエティーに富んでおり、どれも全く異なる怖さです。
本を読む時間はあまり取れないけれど、たくさん読んだ気分にさせてくれて、
さらに、何か刺激が欲しいというミステリ好きの方には、オススメの1冊です。
ちなみに、あまり明るいタイプの話ではありません。
だからと言って、幽霊絡みの怖さがあるわけではありません。
ちょっとそんな雰囲気も感じられる作品もありますが。
本当に怖いのは生きている人間です。
自分の中では、普通だったり、大切だったりすることが、他人も同じとは限りません。
自分の過ちやズレを知らない人は、幸せなのでしょうか。それとも不幸なのでしょうか。
この本には、自分が正しいと信じ込んでいる人がたくさん登場します。
彼らの結末は・・・。
もやもやする感想ですみません。
このもやもや感を取り除く方法は、ただひとつ。
『満願』を読むこと。(笑)
気になる方は、ぜひどうぞ。