世界地図の下書き
2013年7月24日
今日のユキコレでご紹介するのは、朝井リョウさんの新作
『世界地図の下書き(集英社)』
です。
朝井さんというと、今年1月、『何者』で直木賞を受賞。
この時、23歳。
直木賞史上初の平成生まれの受賞者
&男性受賞者としては最年少ということで注目されました。
また、大学在学中に書いた『桐島、部活やめるってよ』は
ベストセラーになり、映画化もされました。
これら2冊は読んだという方、多いのでは?
私はというと、この有名な2冊は、実はまだ読んでいません。
でも今回新作を読んで、これら2冊も読んでみたくなりました。
ちなみに過去に読んだことがあるのは、『星やどりの声』です。
◎感想は コチラ
こちらの作品は、それほど話題にはなっていないけれど、好きな作品です。
泣いて泣いて泣きました。
子供の正直な気持ちに心を打たれた作品です。
7月5日に発売されたばかりの新作『世界地図の下書き』も、
そんな子供たち目線で書かれた作品です。
舞台は児童養護施設。
主人公は小学生3年生の太輔(たいすけ)。
彼は突然の事故で両親を亡くし、児童養護施設で暮らすことに。
児童養護施設の子供たちは、基本的には明るく元気ですが、
それぞれ事情があり、悩みを抱えています。
そんな彼らが頼りにしているのが、
みんなのお姉さんでもあり、お母さんのようでもある六歳上の佐緒里。
物語では、同じ班の5人を軸に物語が進んでいきます。
一緒に暮らす中で、お互いのことを知り、そして成長していく子供たち。
でも、みんなで過ごす日々も永遠には続きません。
年上の佐緒里が施設を卒業することになります。
そんな佐緒里のために、4人の小学生たちはある作戦を計画する・・・
というお話です。
・・・
朝井さんは、集英社の特別サイトで、
「小さい子供たちがいじめや体罰で自ら命を絶ってしまうのをニュースで見て、
彼らには精神的なセーフティーネットがないと感じた。
では、なぜ逃げ出さなかったのかと考えたとき、
“逃げる”または“生きる場所を変える”
という選択肢を想像すらしなかったのではないかと気づいた」
とおっしゃっています。
だから、今回の作品で、子供たちにしっかりとした希望を背負わせてあげたかったと。
特別サイトのインタビュー記事は、とてもいい内容なので、ぜひ全文を読んでみてください。
⇒ http://www.shueisha.co.jp/sekaitizu/
よくある物語は、ハッピーエンドになって終わり。
たとえば、結婚して終わり。ということもあるけれど、
その先にもまだまだ色々なことが続いていきます。
あまりにも綺麗に終わる物語だと、
その先のことを忘れてしまいそうになりますが。(笑)
でも、実際は続いていくのですよね。
この本は、希望を感じさせつつも、現実も感じられる作品でした。
辛い時や余裕が無い時というのは、
頭の中の世界がとても狭く小さくなってしまうと思うのです。
そうなると、色々な人から正しいことを言われても
受け入れる容量が少ないから頭に残ってくれない。
でも、そんな中でも心にしっかり響く言葉に出合えることがあります。
ざわざわしたうるさい中でも、
その言葉だけは、しっかりと聞き取れるような。
私はこの本を読んでそんな言葉に出合えました。
読んでよかった。
・・・
・誰も自分のことをわかってくれない。
・人といるけれど、孤独を感じる。
・新しい世界に飛び込んでいきたいけれど、勇気が持てない。
そんなみなさんは是非この本を読んでみてください。
きっと気持ちが楽になると思います。
私は、どこか新しい世界に飛び込む度に、この本のことを思い出すように思います。
現実的でいて、でも希望のある物語を。
・・・
『世界地図の下書き』の主人公は、小学生です。
ちょうど学生さんたちは、明日から夏休みが始まります。
子供たちのお話なので、きっと共感もたくさんできると思います。
学生の皆さん、是非、読んでみてください。
また、お子さんたちだけではなく、大人の皆さんも是非!
この本を読んだ後は、ご自身のお子さんたちが少し大人びて見えるかも!?