晴天の迷いクジラ
2012年6月13日
今日のユキコレ(13:45〜オンエアー)で紹介する本はこちら。
『ふがいない僕は空を見た』の著者の2月に出た最新作です。
読み始めてすぐ、ああ、めんどくさい話に首を突っ込んでしまった、と思いました。
なぜなら、ちょうどこの本を読み始めた時、
私自身、心の中にモヤモヤしたものを抱えていたので、
人の不幸話を聞く余裕が心になかったのです。
しかも、主人公が私より状況がよくないときたもんです。
お前の悩みなんて大したことねえよ。
俺なんてさ…と聞いてもいないのに、勝手に話を始められてしまったようで、
なんでこんな本を選んでしまったんだろうと早速後悔。(笑)
私だって辛いのに…と思いながら、
ぶすーっとした表情のまま読み進めていったのですが、
気付いた時には、私のことなんてどうでもよくなっていて、
というか、自分自身が登場自分たちと少しずつ重なる部分があって、
どっぷり世界にひたっていました。
みんな普通に真面目に日々を送っているだけなのに、どこかうまくいかない。
そのもどかしさが、とてもよくわかって、
ページをめくる手をとめることができませんでした。
主人公は、3人。
24歳のデザイナーの男性。
そのデザイナーが務める会社の女社長。
そして、引きこもりの女子高校生。
この順に、それぞれの過去から今に至るまでの人生が描かれます。
そして、最後には、この3人がひょんなことから関わることになります。
この本を読みながら一番感じたのは、
人は、人と関わることで、自分の心とも向き合っていくんだなということ。
自分のことは自分でどうにかできると思っているうちは、
結局解決できないのかもしれません。
例えば、知っている人の意外な一面に触れた時、
もしかしたら元彼女にも別の一面があったのかもしれないと気付いて、はっとする。
元彼女のことは全部わかっているつもりだと思っていたけれど、
そうじゃなかった、と気付く。
そういうことってありませんか?
自分の頭の中だけで考えても絶対に辿りつかなかった答えを
他の人の言動から知るということ。
この本を読み始めたとき、
主人公の不幸話をめんどくさいと思ってしまったと先ほど書きましたが、
最後、本を読み終えた時は、彼らと離れるのが寂しく仕方ありませんでした。
そして、寂しさとと同時に、心も軽くなっていました。
本を読む前にうじうじ考えていた悩みが小さくなっていました。
あ、ここ重要です!
悩みが消えていたのではなく、
小さくなっていたのです。
人間の心は、0か100かではっきり分けられるものではないですものね。
そのことに気付けたのも大きかったかな。
『晴天の迷いクジラ』。読んで本当に良かった。
なぜだかうまくいかなかったり、
忘れたつもりで、ただ逃げているだけだったり、
誰かを傷つけられたり、逆に傷つけてしまったり。
でも、誰にもその思いを話していない。
そんな方、ぜひ、読んでみてください。
あなたの悩みが、100%消えてなくなることは無いと思うけれど、
でも、何かしらのいい変化はあるんじゃないかなあと思います。