『舟を編む』
2012年1月4日
2012年最初のブログです。
今年も本の感想を中心に、
マイペースにアップしていきますので、
お暇な時にでも読んでいただけたら嬉しいです。
それから、近々、個人ブログも立ち上げます。
今までも何度か同じようなことを宣言し、なかなか実現しませんでしたが、
今度こそ本当です。(笑)
立ち上げましたら、こちらのブログでもお知らせしますので、
もしよかったら「ゆきれぽ」と合わせてお読みくださいませ。
よろしくお願いします。
・・・
さて、新年1冊目は、こちらです。
『風が強く吹いている』でおなじみの三浦しをんさんの最新長編小説です。
『風が〜』は昨日一昨日と行われた箱根駅伝について書かれた小説で、
舞台化、映画化もされました。
ちなみに、私は小説を読んだのはもちろん、舞台も映画も観ました。
大好きな作品の1つで、毎年、箱根駅伝を見る度、思い出します。
今年ももちろん思いだしました。
◎『風が〜』の私の過去の感想はコチラ
⇒ http://www.fmtoyama.co.jp/blog/tajima/?p=877
『舟を編む』もみんなで一つの目標に向かって頑張る、
という点では、『風が〜』と似ています。
こちらは、船のお話ではなく、辞書を作る人たちのお話です。
新しい辞書『大渡海(だいとかい)』を作るために力を注いだ人たちのお話、
というと、ちょっと難しそうなお話のようですが、全くそんなことはありません。
私は、読み始めてすぐ顔がにやけはじめ、途中から声をあげて大笑いしてしまいました。
なぜなら登場人物2人のやりとりが可笑しくて可笑しくて。
まるでトンチンカンなのです。
いたって真面目に接しているのに、
捉え方がちょっとずれているせいで、
相手をキョトンとさせてしまうのは
玄武書房に勤める馬締光也(まじめ・みつや)。
馬を締めるとかいて、まじめ。
名前までまじめです。
言葉が大好きな彼は、辞書を作るために生まれた、
といってもいいほど、辞書作りに没頭します。
でも、言葉のプロでも、その言葉を実生活ではうまく使いこなせません。
例えば、好きな人に気持ちを伝えようと書いた恋文が、
難しい言葉を使い過ぎて、逆に相手に気持ちが伝わらないなんてこともあるほど。
そんな不器用な馬締以外にも、
辞書作りに関わる人たちは皆個性的。
定年間近のベテラン編集者、
日本語研究に人生を捧げる老学者、
徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男など。
そんな彼らが新しい辞書を作ることになるのですが、
辞書作りは、そう簡単にできるものではありません。
その他にも、辞書作りを阻む様々な問題が生じます。
さて、「大渡海」は無事完成するのか?
といったお話です。
「言葉」を扱った物語ということもあり、
文章のリズムが心地よく、ずんずん読めます。
また、言葉の勉強にもなりましたし、
辞書を作る過程を知ることができたことも、面白かったです。
あと、辞書をひきたくなりました。
私は普段は電子辞書を持ち歩いていますが、
あえて紙の辞書をひきたくなりました。
そして、小説に登場した言葉を思わず調べてしまいました。
「恋愛」「男」「女」など。
こんな言葉ばかりもどうかと思いますが(笑)、でも深いんですよ!
辞書への思いも変わりました。
今まではゆるぎない存在として捉えていた辞書に心があるように思えました。
そして何より、「辞書を作る」という一つの目標に向かって熱くなっている様が、
とっても気持ちよかった。
ああ、私もこんな風に仕事に情熱をもって取り組んでいきたいと思いました。
そういう意味では、新年1冊目の本がこの本で本当によかったです。
早速今年、何か本でも読みたいな、と思っている方がいらっしゃいましたら、
是非、この本『舟を編む』をお読みください!
本の装丁も素敵ですので。
実は私、この本はジャケ買いでした。
紺のシンプルな装丁がとても素敵で、思わ買ってしまったのですが、買って大正解でした。
また、帯には漫画が描かれていて、
これは漫画?とだまされてしまうところもにくい演出です。
そうそう、本のカバーも外してみてね!
最後に、『舟を編む』の中から、
私が皆さんにどうしても伝えたいと思った一節をご紹介します。
「言葉の持つ力。
傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、だれかとつながりあうための力」
私もそんな言葉の持つ力を大切にして、
この1年も言葉を紡いでいきたいと思います。
今年もどうぞよろしくお願いします。