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31 『錦繍』とコミック『花もて語れ』

2011年6月22日

梅雨の季節に何かしっとりと恋愛の本でも、と思って、
今日のユキコレ(13:45〜オンエアー)では、
紀伊國屋書店の書店員の皆さんが選んだ文庫
『紀選文庫(きせんぶんこ)』の中から、恋愛の本を1冊、ご紹介します。

宮本輝さんの『錦繍(きんしゅう)』です。
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昭和57年3月の作品。
つまり今から約30年前の本です。

当時ベストセラーになりましたので、
すでにお読みになっている大人の方も多いことと思います。

また、ラジオドラマや舞台化もされていますので、
そちらでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

ちなみに、私がこの本を読むのは初めてでしたが、
30年前とは思えないほどの鮮度を感じました。

『錦繍』は、元夫婦の往復書簡のみで構成された小説です。

ある事件のせいで愛し会いながらも離婚した2人が、
紅葉の美しい季節の蔵王のゴンドラ・リフトの中で、
偶然、10年ぶりに再会したことをきっかけに、手紙のやりとりが始まります。

なぜ、2人は別れることになったのか?
今、2人は、何を考え、どういう状況なのか?

そういった心の内が、丁寧な表現で綴られていきます。
言葉遣いがとても美しく、私はそれだけで、この本を好きになりました。

表現の美しい本に出会う度、私は、声に出して読みたくなるのですが、
この本は、読みたくなる、だけでなく、実際、声に出して読んでいました。

普段の喋りの練習にもいいなと思いました。
美しい表現、きれいな言葉づかいは、
普段から口にしていないと、
いざという時、出てこないものですしね。

そういった意味でも、勉強になる本でした。

また、今の時代、携帯メールの普及から、
絵文字が当たり前になっていますが、
絵文字でごまかされることなく、表現だけで伝わるということは、
なんて気持ちがいいんだと、実感した本でした。

丁寧な表現になると、冷たさを感じることもありますが、
巧い表現だと、冷たさは感じさせないのですね。

表現力をあげなければ、と強く感じた本でした。

手紙は、元夫婦のやりとりですが、
浮気をした男性ならではの言い訳が、
私自身、今まで様々なところで聞いてきた言葉とまるで同じで、
思わず、声に出して読んでわらってしまいました。

元奥さまに、浮気相手を褒めることを書いたり、
浮気を「男の本能」と開き直ったり…。

今の女性は昔に比べると強くなった、なんて言われるけれど、
いえいえ、そんなことはありません。
女性はずっと強いのです。

女性の心の強さ、たくましさこそ、本能かもしれないな、と思いました。

・・・・・

さて、『錦繍』を、思わず声に出して読んでしまった私ですが、
今日は、某コミックもご紹介しましょう。

それは、『花もて語れ』という朗読漫画です。

例えば、「クラムボンはわらったよ」でおなじみの
宮沢賢治さんの「やまなし」を朗読する時、
どうイメージして、声に出して読むのかが、
わかりやすいイラストともに表現されています。

朗読だからこそ、漫画で表現、というのは、とてもいいなと思いました。
これは、小説ではなく、漫画だからこそ成り立つものだなと。

こちらも、勉強になりました。

漫画を読み終えた後は、もちろん、
「やまなし」を声に出して何度も読んでしまいました。

黙読は黙読で楽しいけれど、
声に出して読むと、より理解できるような気がします。

今日はいいお天気ですが、夕方から天気はまた下り坂のようです。
雨の季節。
お家で、声を出しながら本を読んでみるのはいかがでしょう?

yukikotajima 12:11 pm