54・55『エンブリオ 上・下』
2009年10月16日
や〜っと読みました!
いや〜、長かった!!!
先日ご紹介した本『インターセックス』の前作、
『エンブリオ』をやっと読み終えました!
帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの長編小説です。
文庫本は、上下巻あります。
(ですので、カウントは2冊分にさせていただきました)
タイトルの『エンブリオ』とは、受精後八週までの胎児のこと。
九州の海岸沿いにあるサンビーチ病院は、
贅沢な施設と高度な医療で知られ、
不妊に悩む患者を中心に、全国から患者がやってくる有名な病院です。
院長の岸川卓也は、患者からの評判はすこぶるよく、
天才婦人科医として、名声を得ています。
ところが、エンブリオからの臓器移植や、男性の妊娠実験も行っています。
また、人が亡くなっても何とも思わなかったり、胎児を「人間」として扱わなかったりと、
どこか淡白なところもあります。
でも、一見、彼は、とてもクレバーな人間です。
何に対しても冷静さを失いません。
だからこそ、患者も彼を信じることができるのだと思います。
私は、彼の言うことを、半分は理解できました。
でも、半分はモヤモヤしていました。
今、この世に存在している人間の命を救うために、
お腹の中にいる胎児、エンブリオを利用する彼の行為を、
私は最後まで、どう理解すればいいのかわからなかった。
例えば、もし、お腹の中にいる胎児の脳を、
今病気で苦しむお子さんの脳に移植すれば、そのお子さんは助かる、
と言われたら、あなたは、どうしますか?
岸川は、もちろん移植をすすめます。
もし、私が母親だったら、本当に悩むと思うんです。
何年か一緒に生きてきた子供を救いたい。
一方で、お腹の中に宿った子供の命も大切。
でも、どちらか一方の命しか救えないとしたら、
と考えると、とても苦しくなります。
まだ母親になっていない私でさえ、苦しいのだから、
実際に、お子さんを持つお母さんが、この本を読んだら、
もっとリアルに感じられるのかもしれませんね。
そういう、もし自分がその状況にあったら…
と考えさせられる場面がとても多い作品でした。
この『エンブリオ』は、
そういった医療のお話と、
岸川のまわりの人間たちとのやり取りで構成されています。
「小説」としても、とても満足できる内容になっていると思います。
私は先に、『エンブリオ』の続編『インターセックス』を読んでしまったので、
まるで、謎解き感覚で、これはこういうことだったのか!
と理解しながら読んでいきました。
でも、悪くなかったですよ!
結局『インターセックス』の主人公は、別の人間で、
その主人公が、岸川の過去について調べていくので、
案外、『インターセックス』を0(ゼロ)から楽しみたいのなら、
『インターセックス』から読むのもいいかも。
ただし、どちらもかなりの長編ですので、
当分、この作品の世界に浸ることになりますが…。
でも、秋の夜長には、オススメの作品です。
あ、でも寝不足にはご注意を〜!