『カレーの時間』
2022年7月13日
今日も暑いですね。
夏に食べたくなるものは色々ありますが、
カレーが食べたい気分の日もありますよね。
でも作るのは面倒…という時に便利なのが「レトルトカレー」です。
最近食べましたか?
私は先日食べたばかりです。
また、普段から時々食べています。
なんといっても最近のレトルトカレーは美味しいですし、種類も豊富ですからね!
今日ご紹介する本にも「レトルトカレー」が出てきます。
『カレーの時間/寺地はるな(実業之日本社)』
美味しそうなカレーの写真の表紙を書店で目にしたとき、
ちょうどお腹が空いていたこともあり、思わず手が伸びてしまいました。
パラっとめくって目次を見れば、
「夏野菜の素揚げカレー」「ドライカレー 目玉焼きのせ」など
カレー屋さんのメニューのように様々なカレーの名前が並んでいました。
「夏野菜の素揚げカレー」は、レトルトカレーに夏野菜の素揚げをのせたものなのですが、
本を読みながらとても美味しそうだったので、さっそく作って食べました。
素揚げをのせるだけで一気に豪華なカレーになるのも嬉しく、大満足でした。
と、ここまでの紹介ですと、様々なカレーを紹介する小説?と思われそうですが、
メインは家族の物語で、カレーはあくまでもサブです。
主人公は、25歳の男性「桐矢(きりや)」です。
彼は、与えられたもの最大限生かして、
ささやかな幸福を感じながら生きていきたいと思っています。
つまり、挑戦などせず慎重に。
次は、戦後の若者のお話です。
この若者は桐矢の祖父の義景です。
彼は、ずっと空腹で食べ物のことばかり考えています。
物語は、現在と終戦後のふたつの時代が交互に描かれていきます。
なお、現在の義景はというと、桐矢をはじめ家族みんなから疎まれています。
桐矢にいたっては、口が悪く、がさつで、横暴で無神経な祖父のすべてが嫌で、
ここ数年は避けていたほどです。
それなのに、ある日祖父から「一緒に住もう」と言われてしまいます。
絶対に嫌だ!と拒否していた桐矢でしたが、結局祖父と二人で暮らすことになります。
とは言え、いちいち「男とは」について語る祖父にうんざりしています。
でも、桐矢も負けていません。
「男の生きかたを教えてやる」という祖父に対し
「『男らしさ』が美徳だった時代はもう終わりました」と言い返すのです。
「桐矢、よく言った!」と本に向かって声を出した私でしたが…
祖父はまったく桐矢の話を聞いておらず、
「一人前の男になったら嫁も来る」と返してきます。
なんでよーーー。(笑)
こんな感じで、桐矢は何度も祖父に苛ついたり呆れたりしています。
同時に、この価値観はそう簡単には変えられないなとも思います。
変えられないと言えば、セクハラで異動になった桐矢の上司がこんなことを言います。
「ちょっと前までほめ言葉だったことが、もう言ったらだめなことになる。
おれはそんなにだめなのか」と。
この上司と同じことを思ったことがある方もいるのでは。
そう、今、時代は変わりつつあるのです。
そのために自分自身の価値観をちゃんとアップデートする必要があります。
桐矢はちゃんと今どきの感覚を持っています。
でも、この上司も祖父もずっと昔の感覚のままです。
だから、祖父との暮らしは噛み合わないことばかりです。
ですが、一緒にカレーを食べている間だけは少し打ち解けることができます。
祖父は定年までカレーのルーやレトルトカレーのメーカーにつとめていて、
今も良く買っているので祖父の家にはたくさんのレトルトカレーがあるのです。
しかも桐矢のために甘口ばかりを買ってきます。
もう大人だから辛口も食べられるのに、子どもの頃に好きだった記憶のままなのです。
良かれと思ってやっているのですけどね…。
この物語は、現在の話と若かりし頃の祖父の話が交互に描かれていきますので、
きっと読む世代によって共感ポイントが異なることでしょう。
逆に、それぞれの世代の違いについて知ることで、
自分と違うタイプの人に対してすこ〜し優しくなれるのではないかなとも思いました。
物語の最後には、祖父の秘密も明らかになります。
詳しくはぜひ本のページをめくってみてください。
とってもいい作品でした!
祖父の3人の娘やその子どもたちのキャラも濃いし、
なんといってもこの作品を大勢の方に知っていただきたいので、ドラマ化希望!
それから、本の帯には、先日『宙ごはん』をご紹介した
「町田そのこ」さんのコメントもあります。
◎私の『宙ごはん』の紹介は コチラ
同じく食べ物が出てくる『宙ごはん』とセットでお読みいただくのもオススメです。
『宙ごはん』も涙しましたが、この『カレーの時間』も泣けました。
そうそう!
この本を読むとレトルトカレーが食べたくなるので、
ぜひご準備の上、お読みください。